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がくぶち🐌
吉田💛「ここ…どこ……?」
仁人が掠れた声で言う。
すぐ近くで俯いていた俺は反応する。
佐野💟「仁人……?」
俺は名前を呼ぶ。
でもーーー
吉田💛「……誰…?」
その言葉に俺は固まった。
佐野💟「…え?」
一瞬、理解出来なかった。
佐野💟「え、ちょっと待って。」
佐野💟「俺、分かる?」
必死に問う。
でも帰ってくるのは
吉田💛「ごめん…分からないです…。」
仁人の困ったような顔。
喉の奥が冷えていく。
佐野💟「嘘……だろ?」
笑えない。
流石に無理。笑えるわけねぇ。
医者の説明はやけに冷静だった。
医者「一時的な記憶障害の可能性があります。」
医者「時間が経てば戻ることもありますが…。」
医者「おそらく佐野さんの事だけ、思い出せないようです。」
医者「一時的なものだと願うしかありませんね。」
その日から、
全て変わった。
吉田💛「ありがとうございます…。」
他人みたいな敬語。
佐野💟「いいよ……。」
そう返すしかない。
吉田💛「佐野くん。」
その呼び方が一番辛い。
佐野💟「勇斗でいいよ。」
俺はおもわず返す。
でも
吉田💛「いや…なんか申し訳ないし。」
って笑われる。
こんな距離じゃ無かったのに。
頭では分かってるのに。
もうコイツには届かないのかな。
手を伸ばしかけて、止める。
触れて良い距離じゃない。
今の俺と仁人の 心の距離じゃ、触れられない。
今の仁人にとって俺はただの”知り合い”なのだから。
吉田💛「ごめんね…。」
吉田💛「覚えてなくて…。」
ふいに言われる。
佐野💟「謝ることじゃないよ。」
必死に…微笑む。
帰り道、一人になった瞬間。
佐野💟「無理………………。」
小さく溢れる。
あんなに近かったのに。
あんなに好きって言ってくれたのに。
全部一方的な感情になってしまったんだ。
思い出も、距離も、
全部片側だけになってしまったみたいで。
それからの数日間。
毎日会う。
毎日話す。
でもーーーー
どれだけ話してもこの空白は埋まることはない。
吉田💛「佐野くんは優しいね。」
違う。そうじゃねぇんだよ。
仁人の言葉が刺さる。
ある日、夕方の部屋。少し暗い空気。
吉田💛「佐野さん…。」
仁人がぽつり。
佐野💟「どうした?」
吉田💛「俺、」
吉田💛「なんか大事な人、忘れてる気がする。」
心臓が止まりそうになる。
佐野💟「それ、もしかして…俺…?」
思わず聞く。
少しだけ期待してしまう。
でも、
吉田💛「分からない。」
小さく首を降る。
佐野💟「そっか…。」
俺は無理に笑うしかなかった。
その夜、
佐野💟「じゃあ、また明日。」
そう言って帰ろうとしたとき。
吉田💛「…勇斗。」
あの頃の仁人以来、初めて名前で呼ばれる。
佐野💟「え?」
俺は即座に振り向く。
その瞬間、仁人と目が合う。
さっきまでと違う。
ちゃんとした視線。
吉田💛「なんで…」
吉田💛「なんでこんなに落ち着くんだろう。」
一歩近づく。
佐野💟「仁人…?」
息が切れる。
吉田💛「なんかさ、」
吉田💛「思い出したかも。」
佐野💟「え?」
鼓動が鳴り響く。
吉田💛「俺、勇斗のこと、好きだった。」
そのひとことで涙が溢れる。
佐野💟「だった、じゃなくていいだろ。」
声を震わせながら言う。
仁人は少し驚いて、
でもすぐに
吉田💛「うんっ…!」
無邪気に頷く。
吉田💛「今も、好き。」
真剣な目で言う。
もう、無理だった。
そのまま強く抱きしめる。
佐野💟「っ……うぅ……!」
佐野💟「っ…良かった…。」
佐野💟「ほんとに、無理かと…思った…。」
嗚咽が漏れる。
吉田💛「ごめん。」
佐野💟「いいよ。だって全部思い出したんだろ?」
吉田💛「うん。」
少し離れて、顔を見る。
その表情は、仁人の体の温かさは、ちゃんと”吉田仁人”に戻っていた。
これでやっと空白が埋まった…。
もう俺だけが好きなわけじゃない。
仁人も俺を好きでいる。
だから、
佐野💟「もう、忘れんなよ。」
それだけ言って
俺はまた、仁人をやさしく抱きしめた。
_____さのじん『俺との記憶』End_____
コメント
2件
いやいまちょうど吉田さんのロータリーを聞いてたんです。でたまたまこのお話を読んでまじで曲と会いすぎてめちゃくちゃ泣けました😭😭
コメントよろしくお願いします!