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美しきものは、時に残酷である。
芸術の名のもとに、血を流す。
平和の名のもとに、力で縛る。
京都――その微笑みの奥で、誰が消えていったのか。
黒檀の床、金の壁、沈むように深い香の煙。その中央に、雅な装束を纏った京都が、静かに座している。
扇子が、ひとつ開かれるたびに――ひとつの県が、沈黙する。
京都府:「……我が懐に抱かれること、それこそが安寧。異を唱えるは、反逆。近畿、東海、再びこの“都”の元に集うが良い。」
黙して従うも、瞳に憂い。高僧としての誇りを胸に、沈黙を貫く。
奈良:「静けさの中にこそ、抗いの芽は育つ。」
沈黙。武器は置いたが、刀の刃は研ぎ続けている。
和歌山:「……まだ折れちゃいねぇ。」
しぶしぶ。だが伊勢の力を保つため、表向きは臣下に。
三重:「伊勢神宮が燃えるくらいなら……頭くらい下げるわ。」
次に、岐阜。
かつての織田信長が拠点とした「覇者の地」。
京都にとって、歴史は見逃せない。
京都:「“道三の血”を受け継ぐ者よ……いずれ訪れる。その時は、手を取るか、首を差し出すか、選ぶがよい。」
そして――京都の隣、忠犬のふりをしていた滋賀。
輸送、補給、伝令、記録整理、破壊工作の実行まで命令で「全方位の雑務」を背負わされる
滋賀:「ははっ、もちろんですともぉ~!京都はんのためなら、琵琶湖の水、全部運びまっせぇ~♪」
(あ゛ーーーー!!!!何でオレが四国まで物資届けに行かされとんねん!!扇子ひと振りで人をこき使いやがって……あの着物女狐が!!見とけよ……そのうち琵琶湖、沼にしてやるからな……)
京都:「滋賀よ……忠義に篤き汝のような者こそ、我が“帝都”の礎。いつか、相応の褒美を授けようぞ。」
滋賀:「は、ははは……光栄の至りどすえぇ……!!」
奈良は沈黙し、和歌山は刃を研ぎ、三重は顔を伏せ、滋賀は牙を磨く。
だが、いまは――
すべてが、「京都帝国」の掌の上。
霧に沈む岐阜城。戦国武将のような影が、窓から京都を遠く見つめる。
「都が覇を唱えるなら……山は、再び刃を抜く。」