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私はどうしようもない嘘つきだ。
この嘘で親もクラスメイトも喜んでくれる。求めてくれる。笑ってくれる。
私はヒロインを偽り続ける。
これで良いんだ。これで。
雨が降りそうな曇り空をぼんやりと見る。
私は今日、部活をサボった。
特に理由はない。強いていうなら買い出しが少し苦手だからだろうか。
皆と同じ空間に居るだけでも疲れる。誰かと二人っきりなんて、正直なところ嫌。
こんな本音を皆が知ったら驚くに違いない。
私は嘘をつき続けている。周りが望むなら、明るくて、元気なヒロインだって演じる。
心ではこんな姿望んではいない。
本当は静かに、流れに身を任せて過ごしていたかった。
嘘をつき始めたのはいつからだっただろうか。
ふと思い出してみる。
…確か、幼稚園生くらいから私は嘘を言うようになったはずだ。
くだらない、だけど幼い私には大事な嘘。
嘘つきになる前の幼稚園生であった私は友達がいなかった。話す子が全くいない訳じゃなかったけれど、友達とは呼べなくて満足できなかった。
「ねぇ、ママ!」
「どうしたの葵?」
話しかけちゃった…話せることなんて無いのに…どうしよう…
「あ、あのね今日…ゆ、柚葉ちゃんと遊んだの!」
「あら、そうなの?良かったわねー」
ママ、いつもよりも笑ってる…?嘘でも楽しいことを言えばママはもっと笑ってくれるかな…
それが嘘つきな私の始まり。些細なことだったけれど、あの時の私にはママが笑ってくれることが嬉しくて堪らなかった。
その時を境に私は嘘をつくようになった。バレてたかもしれないけれど、必死に嘘をついた。
ママの言葉、皆の言葉。私はどんどん飲み込まれていった。
「明るい子はモテるわよー」
「葵ちゃんって悩みとか無くて元気そうだよね!羨ましい〜」
「天知さんは私が見てきた子供達の中で一番優秀な子よ」
周りの言葉を聞いて、天知葵を作っていった。
嘘で笑って。
嘘で友達作って。
嘘で人気者になって。
嘘の為に自分殺して。
嘘の為に嫌なことやって。
嘘の為に努力して。
皆が見ている私は偽物。
心は痛くて、ずっと悲鳴をあげていた。違う。これは私じゃない。やりたいことじゃない。私が叫び続けていた。
叫んだ分、抑え込んだ。本音を殺した。周りは本当の私なんて望んでないって。
嘘なんてつきたくないけど、求められたいなら、そうなるように偽るしかないんだ。
……だけど、本当は偽物じゃない自分を受け入れてくれる人が欲しい。親友が欲しい。
こんな、偽ヒロインじゃなくて、天知葵を。
愛して欲しい。