もう一人のマネージャー。
普段の私とは正反対な人だから、仲良くはなれなさそうって思った。
聖人なんているのだろうか。
藤花。小町籐花。
もう一人のマネージャーで、優しい人。
きっと藤花ちゃんは、正直者なんだ。
こんな嘘だらけの私と比べると藤花ちゃんは聖人って言っても過言じゃない。
私にとって眩しすぎる人だった。
羨ましさを感じた。表面上は私は人気者で、藤花ちゃんは物静かな人。
だけど本当は、嘘で自分を見失っている私と心の中に強い意志を持つ藤花ちゃん。
私が持っていないものを持っているあの子が、羨ましい。眩しい。憎らしい。
次第にどす黒い 感情はより深く、大きく、悍ましくなっていった。
あの子を壊してやりたいと思った。そんな自分を恥もしたけれど。
一度で良い。聖人のような思考を歪めてしまいたかった。
傷ついて、普段は見せないような醜い内面を抉り出してやりたかった。
人の本性が出るのは、他人の本性を知って心に傷を負った時だと私は思う。
だから、私の本性であの子を傷つけて、聖人なんて存在しないと思いたかった。
どうしてやろうか。私は雨が降り始めた曇り空を見上げながら考え続けた。
色々考えた末に出した結論は単純だった。ストレートに悪意を告げる。それだけ。
でも、あの子をにはよく効くはず だ。
嫌いだと一言。たったそれだけで、あの聖人のような子は壊れるに違いないと思った。
何度も考える。自分はなんて最低なんだろう。
でも、全てを知ったあの子の顔に私は夏を煮詰めたような清々し過ぎる青空を見たい。
着々と計画は進んでいった。
部室が丁度いい。あの子と二人きりなんて部室ぐらいしか無いから。
マネージャーの仕事の一環で二人きりならば、部活中だから、藤花ちゃんをいつも見ているあの部員もきっと見れないだろう。
本当に羨ましい。
誰かに心から自分を好きでいてくれる人がいるなんて。私も欲しい。
正直者なあの子を恋しているあの部員はきっと真剣だ。見ただけで私は分かった。
目が本気だった。鈍い他の男子達はきっと部員の恋心など気づかず無意識に傷つけている。
それが酷くおかしくて、苛ついて。私は一体何に苛ついているんだろう?
…嗚呼、きっと私は藤花ちゃんが心の底では好きなんだろう。親友になりたいのだろう。
だから私は、無神経な奴らに苛ついている。
計画が早々破綻しそうになる。でも駄目だ。私は最低な事をして傷を植え付けるんだ。
所詮、聖人など妄想に過ぎないのだ。
そうでなければ、私に存在価値など無くなってしまうのだから。
嘘であって。
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読んでくださった皆様こんちには! 作者のゆゆです! この話の一部には傘村トータ様の 「小説 夏と罰〈上〉」 の歌詞を参考?引用?しています。 名曲なので是非きいてみてください!