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5 ◇話し合いしたいことがあるの
温子は出勤する前に両親に『仕事から帰ったら夫と妹も交えて
話し合いしたいことがあるからそのつもりでいてください』と言い置き
家を出た。
時には人命に関わるおそれのある仕事をしている温子は
日中、昨夜のことを頭から追い出すのに苦心した。
それにしても、家のなかに娘や両親のいる中でよくもあのような
恥知らずなことができたものよと、呆れるやら腹が立つやらで
職場を出てからの帰り道、はらわたが煮えくり返り抑えがたい怒りが
こみ上げてくるのだった。
そして、皆で夕食を終えたあと、話し合いが行われた。
「お父さん、凛子にはどこぞに家を借りてやってください」
「何言ってんの。余計なお世話よ」
「どうして、今になってそんな無慈悲なことを言うんだ」
「無慈悲ではありません。ちゃんとした理由があるからです」
「ほんとにお姉ちゃんは無慈悲よ。冷血な人よ」
「黙れ! あんたがそれを言うか」
「一体何があったんだ。理由があるというならそれを先に話してくれんと
こちらも話を進められないだろ」
「凛子と哲司さんが……昨夜ふたりが同じ布団にいるところを
見たのです」
「何、言ってるんだ」
「何もこうも、ふたりは夫婦がすることを凛子の閨でしてたんです。
私の言ってること分かります? お父さん」