狩り手

冷たい雨が夜の街を濡らしていた。街灯が薄暗く光り、静けさを帯びていた。少し前に降った雨が舗道に水たまりを作り、その中に街灯が映り込んでいる。少し湿っていて、肌に冷たさを感じる。そんな中、僕はある男を待っていた。

その男の名は「渋谷」。狩り手の中でも、名を馳せている存在だ。どこででも見かけるような男だが、その実力は並外れている。能力者刈りにおいて「死神」と呼ばれるほどだ。噂によると、彼の手にかかると、能力者は逃げることすらできないという。

渋谷は、冷徹で無慈悲な存在だ。彼の言動からは感情が一切読み取れず、仕事に対する執念と冷徹さが一貫している。彼の登場は、必ず「終わり」を意味していた。能力者がその名を聞けば、震え上がるほどだ。

「お待たせ」そう言って現れたのは渋谷だった。

その姿は普通だった。年齢も僕とあまり変わらないだろう、普通のスーツを着て、顔は無表情。目が冷たく、遠くを見ているような印象を与える。

「渋谷さん」僕は静かに挨拶をする。だが、顔を見た瞬間から、すでに次の行動に移らなければならないと感じていた。彼の存在感は、ただの言葉だけでは表せない。周りの空気すら、彼の存在で締め付けられているように思えた。

「どうした、仕事か？」渋谷は目を合わせることなく、静かに僕に言った。

「いや…渋谷さんが出動するのを待っていたんだ。力を借りるわけにはいかないから。」僕は少しだけ言葉を濁す。渋谷の存在は、あまりにも圧倒的すぎて、僕にはその影響が恐ろしいまでに感じられる。

「そうか。」渋谷は短く答えた後、無言で歩き出す。その足取りはまるで無駄がなく、ただひたすらに前を見つめているだけだった。目の前の能力者を討つことに対する情熱も、躊躇も感じられない。その冷徹さが、何よりも恐ろしかった。

「ターゲットはどこだ？」渋谷がふと立ち止まり、僕に質問を投げかける。

「この辺りに潜んでいる能力者だ。」僕は軽く周囲を指差しながら答える。「ただ、渋谷さんが人間が出るとなると…」

「君はどうだ？」渋谷は振り向きもせずに僕に言う。その声にはどこか挑戦的な響きがあった。

「俺は、まあ…まだまだだな。」僕は答える。こうして、渋谷との会話が続く中、僕は冷徹さに飲み込まれそうな気がしていた。

そして、しばらくして、目の前のビルの陰にひとりの人物が現れる。その姿に、僕は一瞬、何か違和感を覚えた。周りを警戒しながら歩くその人物は、確実に能力者だ。そして、渋谷がその人物を見つけた瞬間、彼の動きが一変する。

「見つけた。」渋谷はその一言で全てを終わらせるつもりだ。

その目つきが鋭く、無駄のない動きでターゲットに迫る。能力者が反応し、何かを試みようとするが、渋谷の動きは予想以上に速く、相手の能力すら封じ込めてしまう。僕はその光景を目の前で見守るしかなかった。

能力者が渋谷に捕まった瞬間、彼は震えた。その恐怖はどこか僕にも伝わってきた。だが、渋谷は無表情でただその能力者の動きを無力化していく。

「お前が能力者か。だが、もうお前は意味をなさない。」渋谷は冷たく告げると、瞬時にその人物を倒す。

僕はその瞬間、彼の背後で静かに息を呑む。渋谷はただ冷徹に、次のターゲットを探すだけだ。無駄な感情を一切表に出すことなく、次々と任務を遂行していく。その姿が、まさに「死神」と呼ばれる所以だ。

「終わったか？」僕は渋谷に声をかける。

「まだだ。」渋谷は一瞥もくれず、ただ前を見つめて言った。「次を探しに行く。」

その言葉を聞いて、僕は自分がどれだけ未熟かを改めて思い知らされた。渋谷のように、感情を一切排除して任務を遂行することが、いかに難しいことか。それでも、彼のように無駄を省いて動けたなら、どれだけ楽だろうか。

だが、僕はそれを望んでいない。ただ、彼の冷徹さに引き寄せられるのが、少しだけ怖かった。

夜の街に再び静けさが戻り、僕はその冷徹な男と共に次の狩りへと向かうのだった。