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イギリスが満面の笑みで差し出してきた「黒焦げの化学兵器(ピッツァ)」の凄まじい衝撃により、リビングの殺気は一瞬で吹き飛んだ。「……にゃ、あレは危険です。退避、退避せねば……」アメリカの上に乗っかっていた日帝は、すっかり毒気が抜けたようにふにゃふにゃになり、這いずるようにしてアメリカの上から降りた。ナチスも
「あの男(イギリス)、戦時中より凶悪な兵器を開発してやがる……」と青ざめてアメリカの羽交い締めを解き、音もなく距離を取る。解放されたアメリカは「助かったぁ……!」と床に大の字になって涙を流していた。しかし、危機を脱したのも束の間、日帝のアルコールは完全に限界を迎えていた。足元をふらつかせ、視線をとろんとさせた日帝は、ソファの横でオロオロと心配そうに立っていた実の息子――日本の方へと、ふらふらと歩み寄っていく。
「ふにゃ……。そこにいるのは……」「えっ? あ、父さん……? うわっ!?」日本が驚く間もなく、日帝は日本の足元に座り込むと、そのまま日本の膝の上に本物の猫のように丸まって、頭をすり寄せた。軍帽子から飛び出た猫耳が日本の服に擦れ、軍服の裾から伸びた黒いしっぽが、嬉しそうにパタパタと日本の脚を叩いている。
「にゃ……むにゃ……。やっぱり、お前の側が一番落ち着きます……」
「と、父さん!? ちょっと、みんな見てますから! 恥ずかしいですってば!」真っ赤になって慌てる日本だったが、日帝は完全に理性を失っており、息子の膝を極上のベッド代わりに定め、そのまま規則正しい寝息を立てて本格的に眠りに落ちてしまった。
「(パシャパシャパシャパシャパシャシャシャッ!!!)」その横では、にゃぽんが凄まじい神速の指捌きでスマホのシャッターを切り続けていた。
「お父様が……実の息子(現日本)の膝の上で丸まって……っ! 親子逆転、年の差(?)癒やし系極上スキンシップ!! 最高の供給、ありがとうございます神様ァァ!!」にゃぽんの鼻血はもはやリッター単位で噴出せんばかりの勢いだ。ソファでは、ソ連が
「ガハハ! 日帝の奴、甘えん坊なところは昔のままだな」とウォッカを飲み、ナチスは「フン、普段は生真面目な男が、醜態を晒しおって」と呆れつつも、どこか微笑ましそうに日帝を見守っていた。◇数十分後。リビングの現国たちがイギリスの暗黒ピッツァをどう処分するかでもめている中、日本の膝の上で眠っていた日帝の猫耳がピクッと動いた。「……ん、にゃ……」ゆっくりと目を開ける日帝。まだ頭にはアルコールが残っているようで、視界が酷くぼやけている。日帝は自分の頭を優しく撫でてくれている日本の顔と、その横でスマホを握りしめてハァハァと言っているにゃぽんの顔を、じっと見つめた。そして、ぽつりと呟いた。
「……おや。……海に、空ですか。お前たち、私の目が覚めるまで、ずっと側にいてくれたのですね……」
「「え?」」
日本とにゃぽんの声が重なる。日帝はまだ夢の中にいるような、酷く愛おしそうな瞳で二人を見つめ、日本の頬にそっと手を添えた。
「相変わらず、海(日本)はしっかり者で、私に敬語を使ってくれる優しい子だ。……鮫のしっぽを揺らして、よく英国の海軍技術の素晴らしさを私に熱弁してくれましたね。俺は英国を尊敬しているんだ、と……」
「父さん……? 私は海じゃなくて、日本ですよ……?」困惑する日本を余所に、日帝は今度はにゃぽんの方を見て、ふわりと目を細めた。
「空(にゃぽん)も、いつもハイテンションで、その大きな羽をパタパタと羽ばたかせて。僕が一番大空を速く飛べるんだ、と……ゴーグルをきらめかせて自慢していた姿が、昨日のことのようです……」
「お、お父様……? 私、にゃぽんです……!」日帝の言葉を聞いたリビングの空気が、ふっと静まり返る。ソ連が静かにウォッカのボトルを机に置き、ナチスも腕を組んで目を伏せた。
「……海。そして、空か。懐かしい名前だ」ソ連が珍しく真面目な、どこか寂しげな声で呟く。そう。日帝が口にした「海」と「空」――それは、かつて大日本帝国陸軍(日帝)と共に、三位一体となって戦い抜いた、『大日本帝国海軍(次男・海)』と、『大日本帝国空母(三男・空)』のことだった。しっかり者で敬語を使い、鮫のしっぽを持ち、イギリスの海軍に憧れていた次男の海(一人称・俺)。いつもハイテンションで羽が映えており、ゴーグルをつけて大空を愛した三男の空(一人称・僕)。陸(日帝)、海、空の3人が揃って初めて、かつての「大日本帝国」という一つの国を成していたのだ。しかし、先の戦争で海と空は消滅し、残された日帝もまた崩壊した。今、目の前にいる「日本」と「にゃぽん」の姿に、日帝は泥酔した頭で、かつて愛した弟たちの面影を重ね合わせて、無意識に幻影を見てしまっていたのだった。
「……あ。すみません、私はまだ、少し酔っているようです……」数秒後、ハッと我に返った日帝は、自分の勘違いに気づいて耳を真っ赤にし、大慌てで日本の膝から飛び退いた。軍帽子を深くかぶり直し、猫耳としっぽを必死に隠そうとするが、その手は少し震えている。
「父さん……」
日本は、普段はしっかり者で鈍感な父親が胸に秘める、あまりにも切なく、そして重い過去の記憶に触れ、そっと胸を痛めるのだった。だが、そんなしんみりとした空気を、一瞬でブチ壊す爆音が響き渡る。
「大変んねーーー!!! イギリスの炭クズピッツァから、変な毒ガスが出てきて、リビングの観葉植物が枯れ始めたんねーーー!!!」
イタ王の絶叫により、感動の空気は一瞬で消滅した。
「おいイギリス! 貴様、やはりこれ化学兵器だろうが!!」
「失礼なことを言うな! 隠し味にちょっと特殊な薬品(?)を入れただけだ!」
「親父、それ普通に暗殺未遂だからね!?」再び始まったリビングのドタバタ劇の中、日本とにゃぽんは、父である日帝の背中を、これまでとは少し違う、温かい眼差しで見つめ直すのだった。
コメント
1件
ああ、日帝が酔って日本の膝に丸まるところ、もうたまらなかったです……。普段はしっかり者の父親がふにゃふにゃになって甘える姿って、なんでこんなに胸にくるんでしょうね。そして「海」と「空」の話が出た瞬間、空気が一気に変わって、日帝の背負ってる過去の重さを感じました。でもイタ王の絶叫で全部ぶっ壊れるのがこの作品らしくて、泣き笑いの連続でした。