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「ほらね? やっぱり朝日の方がずっと素敵でしょう?」
振り返ると、彼女が立っていた。
彼女の手には、昨晩一緒に選んだ花飾りがある。
「うん、そうだな」
そう言って微笑んでみると、彼女は嬉しそうな顔になった。
「じゃあ、行きましょう!」
元気よく言うと、彼女は私の手を引っ張った。
そのまま二人で玄関に向かい、靴を履いて外へ出る。
外に出てみると、やはり空気は冷たかった。
吐く息も白い。
「寒いわねぇ」
隣を見ると、彼女が呟いた。
「ああ、でも悪くないよ」
「えぇー、寒いじゃない」
「確かに寒いけどさ、こういうのもいいんじゃないかなって思うんだよ」
「ふぅん、いいじゃない。気に入ったわよ」
隣から声をかけられたのでそちらを見ると、ルシエラが微笑んでいた。
「おはようございます」
「えぇ、おはよう。……そうね、朝食を食べたら出かけましょうか?」
「はい!」
お城を出ると、すぐ目の前には広い通りが広がっている。
道に沿って立ち並ぶ家々からは煙突が出ていて、そこから白い煙が立ち上っているのが見える。
「それで、どこへ行くんですか?」
「まずは市場へ行きましょう。その後は教会へ行って、それから神殿かしら。貴方のお祖母様の事を調べなくてはなりませんし、それに――」
「ねぇ、見て下さい! あれは何かしら!?」
話の途中で遮ってしまったけど、気にしない。
それよりも、あんなに大きな建物を見た事がなかったんだ。
「あれは時計塔ですね」
「時計塔? じゃああの中に鐘があるのですか?」
「いえ、違います。中にあるのは歯車だけではありませんよ。ちゃんと心臓部となる機械仕掛けもありますからね?」
「いやあ、しかしですねえ、そもそも動力源がないじゃないですかぁ!」