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「女将!」
そこへ松吉が来て母をたしなめた
「ジンさんに失礼ではないかね?それに今こうして会っているではないか、悪かったね、ジンさん、この人は私の妻の不祢じゃ」そしてこの旅館の女将だよ」
「は・・・はじめまして!ジンです!」
「・・・初めまして・・・」
そこからは宴会は滞りなく続いた、ジンの左右には桜と松吉が座って陽気に歌を唄った、座を盛り上げることかけては松吉と米吉は天才的だった
楽し気に交わされる会話に酒が進み、ジンも出来る限り加わろうとしたが、向かいの座席から桜の母親のフネにぎらつく目で睨まれていては、集中するのが難しかった
そしてやがてフネもいなくなり、桜がジンに言った
「私・・・ちょっとお手洗いに・・・一人で大丈夫?」
「かまわないよ、行っておいで」
今や裸踊りをして皆にヤンヤと囲まれている松吉と米吉を見ながら、酒が進み、先ほどの母との凍るような対面の緊張がゆるんだジンが微笑んで桜に言った
.:・.。. .。.:・
山田旅館の本館を抜けて、桜は一人静かな庭園を歩いていた、美しい庭園の小道を抜け、芝生の広がるエリアへ出る・・・
するとそこに「山田本家屋敷」が姿を現した、断崖絶壁の縁に堂々と佇む本家屋敷は、黒光りする瓦屋根と漆喰の白壁がこれぞ日本家屋とばかりに、まるで歴史そのものが形を成したような威厳を放っていた
背後には淡路島の海が広がり、波の音が静かに響く、屋敷の周囲には広大な敷地が広がり、整えられた芝生や空に浮かぶ雲の様に綺麗に切り揃えられた松の木々が桜の心を癒した
旅館顔負けの本家の美しい庭園を抜け、小池にかかる朱塗りの太鼓橋を渡る時、池の鹿威しが小さく「カッコン」と鳴いた
子供の頃から慣れ親しんだ我が家は、まるで江戸時代から時が止まった様で、ここだけ何一つ変わらず、時の流れに逆らっているような錯覚さえ思わされた
―スパーーーン!―
上庭へと続く石段を登ると、ゴルフボールが打たれる鋭い音が響いてきた、階段を上り切って上庭にたどり着くと、そこには母専用のゴルフ練習場が広がっていた
断崖絶壁に面した芝生のグリーンは、煌々と野外ライトに照らされ、まるで海と空を背景にした絵画の様だ、ターゲットの旗が風に揺れ、遠くの海が今は真っ暗で、打ってもどこに飛んでいくか見えないだろう
練習場の端には、ゴルフバッグとクラブが整然と並び、母の領域を象徴する静かな威圧感を放っていた
そこに佇む母は、ボールをピンに刺した、伝統的な女将の着物姿だが、手にはゴルフクラブを握り、まるで戦士の様なフルスイングでボールを打った
―スパーーーン!―
鋭い音が響いてボールが放物線を描いて海の彼方へ飛んで行った、着物の裾が軽く揺れ、優雅さと力強さが共存する見事なスイングだった
「ママ!」
桜は声を張って母に近づいた、フネは振り向かずに桜を無視し、もう一度クラブを構えた
コメント
2件
不祢さん着物でスイング🏌️♀️カッコイイ✨✨ 威圧感にドキドキする💦
不祢VS桜の一騎打ちね😅 緊張する〜😣