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マレブランド──かつて、血と復讐によって暗き運命が刻まれた場所。
長い年月、闇の軍勢の喧騒に見放されたその古代の要塞は、再び足音のこだまする場所となった。
静寂と孤立に包まれ、要塞の隅々までもが、内部のエネルギーコアから微かに放たれる紅の靄に覆われていた。
――――
王座の間には、黒く焼けた鉄の玉座に一人の影が座していた。
彼は言葉を発さず、身じろぎ一つもしない。
その視線は要塞を貫く長い回廊に向けられ、まるで消えることのない記憶を再生しているかのようだった。
その身を包むのは、ベリアルマント。
漆黒と深紅の布が威厳をもって床を這い、壁の影までも吸い込むかのように揺らめいている。
彼の手には、ギガバトルナイザーが握られていた──その存在が、彼が何者かを語っていた。
その瞳は……ベリアルのものに酷似しながらも、ジードのように蒼く輝いていた。
静謐に見えながら、その奥にはまだ解き放たれていない嵐が潜んでいる。
彼の名は――オブスペラ。
彼の沈黙は、重い足音が広間に響いたとき、終わりを告げた。
オブスペラはゆっくりと玉座から立ち上がる。
最初の一歩は抑えきれぬ怒りを刻み、
次の一歩はトレギアによって形作られた冷たい優雅さを帯びていた。
そして、ひとつの決断的な動作とともに、オブスペラはギガバトルナイザーを床に突き立てた。
荒々しいエネルギーの亀裂が走り、
彼は指先で印を描き、暗黒の門を開く。
──かつて、父と師が行ったように。
渦巻く闇が目の前に広がる。
その先は、宇宙の中心へと通じる場所──光の国だった。
――――
ポータルを抜けた瞬間、彼の眼前に広がったのは、
まばゆい緑の空に覆われたウルトラの星──通称・光の国。
多くの生命にとって、この星は楽園である。
だがオブスペラにとって、それは試練の地であった。
一瞬、宙に浮かびながら、オブスペラは無言でその星を見下ろす。
そして軌道上に浮かぶ衛星へと向かう──
かつてベリアルが囚われていた場所、宇宙牢獄である。
彼は静かなその構造物の周囲を、憎しみではなく、
奇妙な好奇心とともに漂った。
まるで、同じ血に刻まれた傷跡を指でなぞるように。
この衛星はただの天体ではない。
かつて、光の国の中心エネルギー源──プラズマスパークを奪おうとしたウルトラマン・ベリアルを封じるために造られた、宇宙牢獄であった。
その牢獄は、ウルトラマンキングによって設計された。
ベリアルの圧倒的な力を封じ込めるためのもの。
そして幾千年もの間、それは裏切りと破滅の象徴として存在し続けてきた。
その後、エイリアン・ザラブがギガバトルナイザーを奪い、
それを操ってベリアルを解放した。
そして、ベリアルが光の国へ襲撃を仕掛けたことで──
この牢獄はその役目を失った。
今やそれは、ただ静かに軌道を回り続けるだけの衛星に過ぎない。
しかし、その存在は永遠に語り続ける。
ひとつの時代が堕ちたことを――。
オブスペラは鋭い目でその牢獄を見つめ、
自らの創造主にまつわる闇の歴史を思い起こした。
表情は微動だにしない。
だが、その沈黙の奥には、
受け継いでしまった宿命への深い理解が潜んでいた。
やがて、オブスペラはゆっくりと進路を変える。
静かだが揺るぎない決意と共に、光の国へと下降していった。
――――
大気圏を通過した瞬間、
彼の目の前に壮大な景色が広がった。
惑星の中心を取り巻くように浮遊する、
巨大な翡翠色の大陸──
宇宙空間に漂う環のように循環する、結晶質の大地。
その結晶大陸は、プラズマスパークの光を反射し、
無限の空虚の中で神秘的な輝きを放っていた。
これら「軌道プレート」と呼ばれる浮遊大陸は、
地球の60倍の規模をもつこの世界の均衡を維持する柱である。
下方には、エメラルドの光を湛えた惑星表面が広がり、
三百を超える都市が点在している。
プラズマスパークの光は、ただ世界を照らすだけではない。
この星に生きるすべて──ウルトラ族の命を動かしていた。
しかしオブスペラにとって、この景色は美しさではなかった。
それは、歴史そのもの。
力、遺産、そして避けられぬ宿命の象徴だった。
鋭く揺らがぬ眼差しのまま、
オブスペラは大気圏をさらに降下し、
ついに惑星の地表へと近づいていく。
光の国に待つものが何であれ、
それを受け止める覚悟を宿して。
そして──着地した。
柔らかく。
だが決定的に。
爆発も破壊もない。
それでも、その瞬間を目撃した者は震えた。
黒と赤のマントが揺れ、
その身体の紋様が何者であるかを雄弁に語る。
そして、その蒼い眼差し――
時間すら凍りつかせた。
オブスペラの光の国への到来は、単なる訪問ではなかった。
それは、招かれざる新たな章の幕開けであった。
彼が聖なる大地に踏み込むたび、
平和という花に鋭い棘が刺さるようだった。
混乱も、咆哮もない。
しかし──
マントの揺れ、武器の存在、瞬きしない蒼い瞳。
それらすべてが、宇宙の守護者たちの心に波紋を走らせるには十分だった。
彼の目的は?
不明。
宣言もなく、
脅しもなく、
ただそこに立つだけで、
闇の種が芽吹こうとしていることを示していた。
オブスペラは一切攻撃しなかった。
それでも、彼の周囲に渦巻く闇は、言葉以上の重みを持っていた。
――――
その頃、ウルトラスペースポート──防衛と星間監視の中枢では、
巨大ホール中のすべてのモニターに同じ映像が映し出されていた。
聖なる光の下に立つオブスペラの姿である。
司令室には、歴代のウルトラ戦士が集結していた。
ウルトラの父と母、トライスクワッド、ニュージェネレーションヒーローズ、
ウルトラマンリブット、ウルトラマンレグロス、
そしてアルティメットフォースゼロ。
全員が無言のまま、映像を凝視していた。
ジードは、オブスペラの鋭い蒼い眼差しを見つめ、
まるで蘇った過去と向き合っているかのようだった。
その隣では、ゼロが鋭い視線を放ちながら、
この突然の来訪の意味を読み取ろうとしていた。
長年戦場に立ってきたウルトラ兄弟たちは、
外見上は冷静で堂々としていたが、
その内側には、かすかな不安が揺らめいていた。
彼ら全員が待っていた。
ウルトラの父の指示を──
あるいは訪問者自身の言葉を。
ジードは一歩前へ出た。
緊張と不安、そして説明しようのない好奇心が表情から読み取れた。
彼の視線はオブスペラの体の隅々を追い、
拒絶と認識、憎悪と理解、その狭間で揺れていた。
ゼロは戦士らしく無駄な動きを見せず、ただ前を見据えていた。
かつてベリアルと対峙したときと同じ「気配」が、確かにそこにあった。
だがその奥には、トレギアのような冷たい優美さも潜んでいた。
ゼロは焦らない。
戦うことも急がない。
ただ嵐の正体を見極めるために、じっと観察し続けていた。
一方、タイガはタイガスパークを強く握りしめていた。
オブスペラの腕に自分と同じ装置があるのを見て、衝撃が走ったのだ。
かつて父タロウの友であり、
そして影となったウルトラマン・トレギア──
彼の名が頭をよぎる。
タイガスパークは震え、
まるで“双子の気配”に反応するように脈打った。
装置の奥底から伝わる問いがあった。
──オブスペラとトレギアは何者なのか?
──なぜ彼の腕にタイガスパークがあるのか?
ウルトラマンリブットは、鋭い観察眼で呟く。
「この存在……タルタロスの戦術を思い出す」
「だが、何かが違う」
彼は思い返していた。
タルタロスがかつて、ベリアルやトレギアの心の隙、
怒り、孤独、後悔を巧みに利用し、
アブソリューティアンへと引き込んだことを。
ウルトラマンレグロスは、構えを崩さず言った。
「これがタルタロスの企みの一部なら……最悪に備えるべきだ」
ウルトラ兄弟やウルトラリーグは顔を見合わせる。
恐怖と好奇心が入り混じった表情だった。
「奴の目的はまだ見えない」
「だが、その到来だけで光の国の均衡は乱れている」
――――
混乱と不安が満ちる中、
オブスペラは沈黙を保ったまま、戦士たちを見つめていた。
敵意は示さない。
だが、その存在だけで全員の警戒心は最高潮に高まる。
沈黙は重く、
呼吸でさえ圧力となるようだった。
ゼロは前に出そうとした。
だがウルトラの父が手を上げて制する。
「落ち着け、ゼロ。まだ相手が何者か分からぬ」
ゼロはわずかに頷きながらも、視線を逸らさない。
隣で、ジードは拳を握りしめ、
言葉を飲み込むようにして耐えていた。
タイガのタイガスパークは振動を強め、
もはや無視できぬほどだった。
その緊張を見て、ウルトラの父は小さく頷く。
ゼロが応えるように一歩前へ踏み出す。
歩みはゆっくり、しかし一切の迷いがない。
無数の闇と戦ってきた戦士だけが持つ静かな覚悟だった。
そして、オブスペラの目前で立ち止まった瞬間──
空気が凍りついた。
ウルトラたちは誰一人、微動だにしない。
ゼロは深い蒼い瞳を見据えた。
それはベリアルの憤怒を宿しながら、
しかしどこか未知の優雅さを纏っていた。
ゼロが口を開く。
低く、威厳を含んだ声で。
「お前は何者だ? ここに何を求めて来た?」
その声には敵意も恐れもない。
ただ“覚悟”だけがあった。
オブスペラは表情を変えずに見返す。
そして、深く、しなやかで、どこか聞き覚えのある声で答えた。
「お前は誰だ?」
その一言は、静かな刃のようだった。
挑発でも怒りでもない。
ただ、真実を問う声音。
ゼロは短く息を吐き、緊張を抑え込む。
「俺はゼロ。ウルトラマンゼロ、セブンの息子。
光の国の守護者だ。
言葉遊びをするつもりはない。
もし平和のために来たのなら……答えろ」
「ゼロ……ウルトラマンゼロ、セブンの息子」
オブスペラはその名をゆっくり繰り返し、
まるで品定めするように響かせる。
そして、ギガバトルナイザーをゆっくりと掲げた。
挑戦ではなく、儀式のような静かな動き。
ベリアルの力強さと、トレギアの優美さが奇妙に交じり合った仕草だった。
「ゼロ」
低く響く声で告げる。
「お前の力を確かめたい。
俺と──一対一で勝負しろ」
その瞬間、遠くで見ていたウルトラたちが息を呑んだ。
ジードは前に飛び出そうとするが、
ウルトラの父に制される。
タイガのタイガスパークは激しく脈打ち、
もはや胸の内の緊張を隠せなかった。
ゼロは静かにオブスペラを見つめ続けた。
挑戦の裏に何があるのか、読み取ろうとするように。
「……望むなら受けて立つ」
ゼロは言う。
「だが先に答えろ。
お前がここに来た本当の理由は何だ?」
オブスペラはわずかに俯き、
静かに、しかし揺るぎない声で答えた。
「俺の目的は……限界を確かめることだ」
「お前の力の限界を」
「そして、俺自身の“運命”の限界を」
*to be continued.