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「あっ、ごめん。電話長引いて」
するとちょうどいいタイミングで樹が部屋に戻って来た。
危なっ。
なんか直接樹には聞かれたくないような。
女性同士だからこそ話せた有難い時間。
「で。どこまで話したっけ?」
「あぁ。大丈夫。ちゃんとこっちで挨拶済ませたから」
状況を飲み込めてない樹に現状を伝える。
「あっ、そうなんだ?悪い」
って樹の関係ない話をいろいろ聞いてたとはさすがに言えないけど。
「透子さんのしてるネックレス私がデザインしたってとこまで伝えた」
「あっ。今日してきてくれたんだ」
栞さんの言ってるその言葉に、隣に座った樹が、私の胸元のネックレスを確認して嬉しそうに微笑む。
「いいじゃん。やっぱ似合ってる」
照れくさそうに、でも嬉しそうに伝える樹。
「樹くんあれだけこだわって作っただけあるね。ホント透子さんの魅力さらに引き出してて素敵」
「ありがとう・・」
二人して褒められてなんだかとても照れくさい。
だけどやっぱり・・嬉しい。
「頑張って作った甲斐あった。それでさ、仕事の話にも繋がるんだけど。今回一緒に作って手応え感じたのもあって、今度のプロジェクトでもこんな感じで、男性から女性に贈るプレゼントとして手頃なアクセサリーとオーダー制のアクセサリーと両方のパターン作ろうかなって考えてて」
「なるほど。それいいアイデアだね」
「でしょ?とりあえず栞がデザイナーとして今度の新しいブランドで、このプロジェクトだけで独占で作ってもらおうと思ってる」
「独占で作ってもらえると更に価値上がりそう」
「私もデザイナーとして関わらせてもらうんですけど、REIジュエリーの新しいブランドだけど今までとはまた全く違うコンセプトで進める予定なんです。 もっと手にしやすくて、それと同時に男性アクセサリーも広げていこうと思ってます。それでこれが私の今まで手掛けたアクセサリーと今後このブランドで考えているデザインです」
栞さんがそう言って見せてくれた資料を確認。
「確かにあのブランドとは今までとは少し違う感じですね。でもこちらのブランドの雰囲気はスタイリッシュな部分と華やかさとどちらも感じられて素敵です」
「でも、うちのブランドはまだ立ち上げる前で、このプロジェクトで知名度上げたくて。REIジュエリーの新ブランドではありますが、まずはこのプロジェクトで幅広く身近に感じていただこうかなと」
「こちらのブランドで男女一緒にお揃いでつけられる物もあったら素敵ですね」
「そうなんです!それ私も考えてて!で、そのイメージを樹くんと透子さん二人でデザインしたいなって」
「えっ!?私達二人!?」
「はい!うちのブランドのイメージが二人のそのカッコイイ雰囲気にピッタリなんですよ~」
「オレもそれ初耳だわ」
まさかの樹もそれは聞いてなかったらしい。
「なのでまずいくつかまたそのデザインもいくつか考えて来ます」
「了解です。ではまたそれを見ていろいろ検討させてもらいますね」
「はい。よろしくお願いします」
その後、栞さんは本来の仕事があるとのことで会社を後にして、今は会議室で樹と二人。
「わかってくれた? ホントなんでもないから」
樹が私の様子を気にしながら声をかけてくる。
「ん?何が?」
「栞とのこと」
「あ~。うん。大丈夫。栞さんからいろいろ聞いたから」
「は!?え? 何聞いたの?」
するとなぜかそれを聞いて動揺する樹。
「う~ん。秘密♪」
どうだ。樹が得意な秘密返し。
「は?何それ!?」
うんうん。いつものお返しだ。
さぞかし焦るといい。
「なんでそんな焦ってんの?」
珍しく焦って動揺してる樹が可愛くて、ちょっと意地悪したくなる。
「アイツ、いろいろオレの話知ってるからな~。・・・で、どこまで聞いた?」
「どこまでって言われても・・・ねぇ、ほら女同士の秘密?みたいな」
「女同士って言ってもオレの話だよね?」
「まぁそれはそうなんだけどね~。ってそんな気になる?」
「気になる・・・。透子にアイツが何言ったか気が気で仕方ない。仕事にならない」
なんでそんなに不安になってるのか逆に不思議。
「あれ?仕事には影響出ないんじゃなかったっけ?」
つい面白くなって樹の顔を覗き込んでからかう。
すると、真剣な顔で覗き込んだ私の身体を両手で掴まれる。
「もう透子とすれ違うのホントにこれ以上嫌だし、透子にもこれ以上悲しい想いしてほしくない」
まさかの真剣な返しをされて逆に戸惑う。
「オレ、ホントは透子の前では全然余裕なんてないから」
多分、樹は何か違う不安と勘違いして真剣に焦っているみたいで。
「そんな心配しなくて大丈夫。悲しい想いなんてしてないから」
逆に樹の両腕を掴み返して安心させる。
「栞さんからは樹が真剣に私のこと想ってくれてたって教えてもらっただけ」
「ホントに?」
「ホントに。逆に私は栞さんからそれ聞いて嬉しかったよ?」
だけど、今まで見たことない樹の雰囲気。
「どしたの?急に。そんな弱気な姿、樹らしくないね」
いつでも強気で読めない樹なのに。
「そりゃ振り向いてほしくて必死だったから。 透子に気持ち伝えるまでは弱気な自分見せないようにして頑張ってた」
何その可愛い理由。
「でも今は違うの?」
「今は・・透子失いたくないだけ。今は透子の気持ち繋ぎ止めるのに必死・・・」
もう何その弱気だけど可愛い感じ。
思わず愛しすぎて樹の首に両腕を回してしがみつく。
「もう可愛いな~!樹のこと好きな気持ち大きくなるだけだから安心しなさい!」
何、樹ってば、こんな可愛い一面もあったワケ?
このカッコよさにこんな可愛い一面まで見せられて、年上の自分からしたらその魅力たまんないんですけど。
「ホントに?」
すると、抱き付いた私の腰に今度は樹が両手を回して来て、ギュッと抱き締めて更に樹の方へと抱き寄せる。
そして目の前に近付く樹の顔。
「オレのこと好き?」
「あぁ・・うん・・・」
目の前でそんな可愛い顔の後に色気全開で聞かれて、今度はこっちがドキドキして戸惑う。
「ちゃんとオレの目見て、好きって言って」
「は?なんで・・」
なんでまた今度は立場逆転してんの?
「じゃないと放さないよ。ずっとこのままで仕事に戻れないけどいい?」
「はっ?それは困る!」
「オレはずっとこのままでも全然問題ないんだけど」
「いや!こっちは問題あるから!」
くそー。またいつものこの感じに戻ってしまった。
「じゃあ、ちゃんと言って」
仕方ない。これはちゃんと言って逃げるしかない。
「・・・好き」
樹の目を見つめながらそうそっと静かに呟いて、その言葉を言い終わったと同時に、自分から樹にチュッと軽くキスしてやった。
すると、その一瞬、樹が驚いて手の力が緩んだ。
それと同時に身体から離れるのに成功。
「ちょっと透子・・・。それ反則」
さすがに私のその反応は予測してなかったのか、樹が照れた様子で反論。
「どうだ。年上なめんなよ」
そんな可愛い反応見れるんなら、たまにはこんな感じもありだな。
樹が不安になる時は、年上の自分がちゃんと支えてあげないと。
「やば。透子。最高」
するとその感じにハマったのか樹が一人嬉しそうに笑ってウケている。
よかった。
いつもの樹に戻った。
「私が恋しくなったらまたうちの部屋に来たまえ。ご馳走してあげよう」
「ふっ。喜んで」
するとまた樹が優しく嬉しそうに笑顔で答えた。
「じゃあ。今日の夜行っていい?」
すると樹がすぐに反応する。
「すぐだね(笑)いいよ。ご飯なんでもいい?」
「もちろん」
「なら用意して待ってる」
「よろしく」
「じゃあね」
こんな風な何気ないやり取りが出来るだけでただ嬉しくて。
一つ一つ樹のことを知っていけるのが嬉しくて。
今はどんな時間でも樹といられれば、それだけで、幸せだ。