莉音の記憶が蘇る
そこはかなり広く
綺麗なお花がいつも飾ってある
マンションだった
家族は
ママ・名前は梨々子
僕
お手伝いさんの早苗さん
時々、パパ
そう、パパは毎日じゃなく、時々お家にいた。
ママはお姫様みたいにとっても綺麗で、素敵な服を着ていた。
「莉音ちゃん、ますます奥様に似てらっしゃいましたね」
早苗さんが言うと
ママは露骨に嫌な顔をして、早苗さんはしまったと言う顔をして「すみません」とあやまってた。
僕は女の子の服を着ていた。
髪も長くして。
1度イヤだと言ったらママに頬を叩かれ、
すごく怖くって
僕はもう言わないって決めた。
同い年のお友達はみんな幼稚園に行ってるのに、僕はずっとマンションの中にいた。
パパはいつも玩具をたくさん買ってきてくれた。
お洋服のワンピースやリボンと一緒に。
窓から、男の子達がズボンを履いて走り回っているのが見え、僕はとてもうらやましかった。
僕だって走りたい、お友達と遊びたい。
だけどパパはダメだと言う。
外は怖いからって。
「可愛い可愛い莉音」
パパは僕のほっぺにいつもキスをする。
…ママは顔をそらしていた。
ママはパパがいない日は、
お買い物やエステや…と楽しそうに出かけて行ったけど、僕を絶対連れて行ってくれなかった。
早苗さんは美味しいご飯やお菓子をたくさん作ってくれた。
…寂しそうな目…今思えば哀れみの目で僕を見ながら。
ある日。
ママが暴れた。
そして僕を殴った。
僕は何もしてない。
したのはパパ。
パパがほっぺじゃなく、
僕のお口にキスしたから。
僕はびっくりし、そしてイヤで暴れた。
ママはパパも叩いた。
「私だけを愛してくれないとイヤ!こんな子、産むんじゃなかったわ!」
ママは僕を殴りながら
「おまえなんか大嫌い。男の子のくせに女そのものの顔をして。あなたを誘惑しているんだわ!」
と、叫んだ。
「そんなわけないだろう。つい自分も似合うからとこんな格好をさせてしまった、あやまる、もうやめる。莉音は私たちの息子だ」
パパはママを必死で止め、なだめた。
今ならわかる。
それは嫉妬に狂って子供を敵とみなした、母ではなく、女だった。
殺される
恐怖で動けなくなった。
その時やってきた早苗さんが異変に気付いて、
ママのお母さん・おばあちゃんに連絡をした。
おばあちゃんはすぐに駆けつけててくれ、
僕を抱き寄せ、
「もうあなた達の元に置いておけない。梨々子、あなたとは縁を切るわ、実の娘なんて思いたくもない」
と、自分の家に連れて帰ってくれた。
ママはパパの愛人。
僕ができた時、
それを武器にして子供が生まれないパパに結婚を迫ろうとした。
けどパパは実は黙っていた。
ほぼ同時に、奥さんに子供が産まれた事を。
パパと正式に結婚ができないとわかってから、
ママは僕を産んだ事を後悔した。
目の前の僕に腹を立てた。
が、パパが「綺麗な顔」をした僕を溺愛するから我慢していた。
僕は愛されていなかった。
ママにとっては役立たずの道具。
パパにとっては可愛い着せ替え人形。
愛情なんかなかった。
なかった。
おばあちゃんは
僕を大切に
育ててくれた
僕は小学生になった
おばあちゃんは
時々、僕の顔を見てつぶやいた
お母さんに似ないと良かったのにねえ…
男の子なのに
女の子みたいな顔…
でも僕は
鏡に映った自分の顔が
武器になると
気づいた
女の子たちが
ひそひそ騒いでいたから
…愛してほしい
…愛されたらいい
…孤独から抜け出すために
僕は僕を
武器にする
続く
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