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(…一体僕はどうしたんだ……)
家のベッドで寝ながらそう思っていた。
好きじゃないのに。
結局別れを言う事はできなかった。
このままじゃいけない!
別れなければ!!
だが、何もせずに日々は過ぎていった。
僕と藤本は何回かデートをした。
その度に『別れよう』と思っているのだが、なかなか言い出せない。
藤本は藤本で、毎日楽しそうだ。
最初のデートの日から、大学にくるときもコンタクトにしたり髪もしばらなかった。
その事で事情を知っている友人は、からかったりしてきた。
僕はそれを適当に流しながら日々を過ごしてきた。
そして十二月。
季節は冬。
大学では各教科から課題の提出を迫られていた。
昼休みに僕は友人と自動販売機のジュースを飲みながら廊下を歩いていた。
「お前さぁ。梅田教授の課題終わった?」
「いや、全然。まだ花井教授のしか終わってない。」
「マジかよ。そりゃやべぇって。」
「やばいよなぁ…。」
「あぁ……」
「……」
重苦しい会話。
そのうち、どちらともなくその話題には触れないようにした。
「そういえばさ、お前まだ藤本と付き合ってんだろ?」
「…まぁな。」
「本当に好きになったのか?」
「……違う…と思う。」
「なんだ、消極的だな。」
そう。
僕は迷っている。
もしかしたら藤本の事を好きになってるのかも、と。
友人は何も言わない僕を見て、申し訳なさそうに言った。
「悪かったよ。まさかあの告白が成功しちまうとは思わなくてさ。」
「…僕もだよ。」
「ジャンケンってのが間違いだったな。別の方法を取ればよかったぜ。」
「そういう問題じゃねぇよ。罰ゲームで告白っていうのが間違いだ。」
僕は友人の頭を軽くはたいた。
その後半ば冗談で落ち込んでるフリを見せたら、思った通り飯をおごってくれた。
次の日。
僕は歩いていると、バッタリ藤本に会った。
藤本は昨日の午後の授業出てなかったな。
休むようなやつじゃないんだけど。
もしかして風邪とかかな。
そう自然に心配してしまう僕がいた。
「あっ……」
「ねぇ佐倉くん。ちょっといい?」
「あ…うん……。」
そしてあまり人気のない所に連れてこられた。
「…どうした?」
「……」
藤本はなかなか口を開かない。
が、しばらくして意を決したのかしゃべりだした。
「私、聞いちゃったんです。」
「何を?」
「おととい、佐倉くんが友達としゃべってる内容を。」
おととい?
友人?
話?
僕は藤本が何を言っているのか、理解するのに十秒ほどかかった。
「……罰ゲームだったんですか?私に告白したのは…」
「……」
「全部遊び、嘘だったんですか!?」
藤本の語調が強くなる。
「デートしたのもキスをしたのも全部!!!!」
藤本はいつのまにか涙を流していた。
僕は何も言えずにいた。
「…ゲームだったんですね……」
「ぼ、僕は…」
「もう…いいです。今日…今をもって別れましょう。」
藤本は僕の顔を見ずに言った。
そして僕の言葉を待たずに走って行った。
『別れる』
それは望んでいたはずのもの。
だが僕の心にあるのは喜びではなく、寂しさだった。