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「今回の件は一人じゃ訴えても難しい問題だったけれど、みんなで訴えれば大きな力になると思います。このような機会(チャンス)を与えて下さりありがとうございます!」
志摩から握手を求められたので、美晴はしっかりと握り返した。
ここにいる皆は幹雄を失脚させたいという同士。ひとりじゃない、と思えるだけで勇気がわいてくる。
それにしても松本幹雄という男は、とんでもない男だったようだ。他にも新人職員にすべての業務を押し付けて会計事務所を開けていたことを聞いた。
サボった昼間にこずえと逢引きし、ホテルへ行って赤ちゃんプレイで遊んでいたことに繋がった。
幹雄は相当職員に嫌われているようだ。家にある書面はきっちりしているので会計士としての腕はあるのだろうが、それよりも性格に難がある。
「美晴さん。ここに集まっているのは松本幹雄に恨みを持つ人だけじゃないのよ」
笑顔で亜澄から紹介された女性は、こずえに酷い目に遭わされた被害者だと言う。
「上原こずえに婚約者を盗られてしまって……結婚の準備をしていたのに……本当に悔しいです!」
「私も同じです」
なんと同様に被害者が3人もいた。
「私も夫を寝取られました。親友だと信じていたのに…」
美晴と同様、大切な人を奪われた同士で語り合った。こずえは人当たりもよく心を掌握するのがうまい人間だ。つい信じて秘密を語ってしまう。そこに付け入られた。
幹雄やこずえは、こんなにも多くの人間の恨みを買っていたのか。
そしてその中のひとりが美晴だ。人としての尊厳を奪われ、虐げられ、挙句の果てには子供を殺された――
同士は目を合わせ、深くうなずいた。
『松本幹雄 上原こずえ 婚約披露パーティー』と書かれた会場は立食形式となっており、多くの議員、実業家、メディア関係者など、幹雄の繋がりを持つ社会のエリートたちが集結した。義母が起こした事件があるから余計に注目されている。幹雄がどう出るのかという論議になった。
「彼が急に婚約を発表した目的は、母親のスキャンダルを世間から忘れさせるためと、新しい家族を持つことで松本家のイメージアップを図るつもりなのよ。そこを狙いましょう!」
どのタイミングで話すかは私に任せて、と亜澄が言ってくれた。祝いの言葉を述べる際、全ての証拠資料をプリントアウトしたものを配っていくから、と。
簡単な作戦会議をしていると、照明が絞られた。喧騒に包まれていた会場に静寂が訪れる。
いよいよ、パーティーが始まる。
最後のリベンジプランが、遂行される時だ。