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📩 相談高校2年・男子(仮名:Kくん)
小学校のとき、
自分がある子をいじめていたことがあります。
当時は仲間と笑ってやっていたけど、
最近ふいにその子の名前を見かけて、
自分だけ何事もなかったように生きてるのが、怖くなりました。
今さら謝るのも変で、何ができるかもわかりません。
ただ、自分がすごく軽く見えてしまいます。
日下部
「……うん、なんか……すごく、わかる」
「時間が経つほど、“あのとき”が遠くなる。
でも、自分の中では、どこかで残ってるんだよな。ずっと」
蓮司
「へぇ。
“残ってる”って言えるの、いいね。
オレは、そもそも“残ってる”って感じがあんまりないなあ」
「やったことがあるのはわかってるけど、
それが今の自分にどう響いてるのか、たまにぼんやりする」
遥
「……誰かを傷つけたことがあるって、
忘れられるタイプと、忘れられないタイプがいるのかもな」
「どっちがいいとか、わかんねぇけど」
日下部
「“許されること”より、“許されないまま過ごすこと”の方が、
大事な気がするんだよな……。変かな」
蓮司
「いや、変じゃないよ。
ただ、たぶんそれ、“ちゃんとしてる人”の言い方だと思う」
「オレみたいなタイプは、
“どうせ誰も全部は許さないし、オレも全部は謝れない”ってとこで止まってる」
遥
「それ、正直っちゃ正直だな」
蓮司
「うん。
そもそも、“正しくありたい”っていう願望自体が、
ある人とない人がいると思うよ。
オレは、……たぶん、あんまりない方」
日下部
「……じゃあ、何も背負わないの?」
蓮司
「背負ってるんじゃない?
ただ、それを“背負ってる”って顔してないだけで」
「たとえば……
思い出さないようにしてるだけで、夢には出てくるとかね」
(少し沈黙)
遥
「……誰かを傷つけた記憶って、
自分にとってどのくらい重かったかで、形が変わるのかも」
「軽く見えるって思えるのは、たぶん、
ほんとは全然軽くないってことじゃね」
日下部
「……うん」
蓮司
「そ。
“笑ってるフリしてる”だけで、
中身は案外ぐちゃぐちゃかもしれないしね。
ま、そういうもんで、生きてるんだと思う」