テラーノベル
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梅雨明け前の放課後。
教室にはクラスメイトが、
数人残っているだけで、
じきに人の気配も消えた。
元貴はなかなか机から立てなかった。
手の中のスマホが、ぎゅっと汗ばんでいる。
どうしても、今日こそちゃんと、
聞かないといけない気がした。
窓側の席で漫画を読み耽る涼ちゃんに、
元貴は勇気を出して声をかける。
元貴『涼ちゃん、
ちょっと話したいことあるんだけどさ…
屋上で――いい、?』
涼ちゃんは一瞬表情を曇らせながらも、
『いーよ?』と軽く笑って立ち上がる。
日が傾きかけた屋上。風がまだ湿っている。
2人きりになった途端、
元貴の心臓は激しく鳴り出した。
涼ちゃんが柵に寄りかかりながら、
無邪気な声で言う。
涼架『どうしたの?
元貴から2人きりで呼び出すとか、珍しいなぁ』
元貴はしばらく黙ってから、
覚悟を決めて言った。
元貴『涼ちゃん…若井のこと、
好き……なの、?』
一瞬だけ、涼ちゃんの目に動揺が走る。
でもすぐに、いつもの笑顔に戻った。
涼架『…やっぱ気づいてた?』
元貴『気づいてたっていうか…
ずっと、もしかしてって思ってて、
でもはっきりしなくて…正直、今も少し怖い、』
涼ちゃんは短くため息をついた後、
素直な声で答える。
涼架『うん…好きだよ、ずっと、
元貴と若井と俺、3人でいるのが当たり前で、
でもどんどん、自分が“ただの友達”じゃ
いられなくなって…気付いたら、ね、』
元貴は唇をぎゅっと噛んだ。
元貴『僕…若井と付き合ってる、
でも、隠してた…涼ちゃんにだけは、
知られたくなかったから…』
涼ちゃんは苦笑いで首を振った。
涼架『気づいてたよ、前より元貴、
若井のことで笑ったり、落ち込んだり、
すごく分かりやすくなったからさ、』
元貴『……ごめん、』
その時、涼ちゃんは静かに、
でもまっすぐ視線を合わせてこう言った。
涼架『別に、元貴のこと責める気ないよ、
2人がお互い好きだってことも、
幸せそうなのも分かってる、
でも――この気持ちは引っ込めるつもりない、
元貴が何回だって“彼氏”だって言ったって、
俺の“若井が好き”って気持ちは負けないから』
涼ちゃんの目は冗談めかした色をしているのに、
その奥の痛みと覚悟の強さが、
ひりひりと伝わった。
元貴『…ありがとう、教えてくれて、
でも、正直、どうしたらいいか分かんない、』
涼架『分かんなくていいよ、
今まで通り、3人で馬鹿すればいい、
僕、当たり前の幸せなんか望んでないし、
でも若井のこと諦めるつもりもないから、
元貴が泣いてた時みたいに、
ずっと友達でいる自信もあるし、
たまにムカつくこと言っちゃったら…
好きすぎて拗ねてんだなって思っといて、』
元貴は思わず、小さく笑ってしまった。
切なすぎるのに、どこか涼ちゃんらしくて、
なんとなく、少しだけ救われた気持ちだった。
元貴『…うん、ありがとう、涼ちゃん』
涼架『おーし、帰りにコンビニ寄って、
アイス買お?
どうせテスト勉強なんかやる気ないでしょ?』
涼ちゃんは明るく笑って、
それでもきっと本当は、
誰よりも強く若井を想っている。
揺れる空の下、
新しい痛みの中で、
それでも僕たちは友達のまま次の日を迎えた。
涼ちゃんの一人称が
度々変わっちゃってるかも…😭
もしそうだったらごめんなさい…😭💦
コメント
3件
なんて優しいんだ涼ちゃん😭💛 三角関係って悲しい😭😭😭