「声でなくなったんだろ」
答えに応えるように動いてた手がピタリと止まった。
はっと息がでる。頬に冷や汗がたれ、沈黙の時間が流れる。
その沈黙の時間を止めたのは彼だった。
「ずっと不自然だと思ってたんだ」
「だって彩はよく話して、よく笑ってただろ?」
「それで察した。ああ、俺と同じで声が出なくなったんだなって」
俺とお揃いだって言って彼はニコッと笑った。
私を慰めてくれるんだろう、大丈夫だっていって笑ってくれて、お揃いだなって言ってくれてる。
そんな彼が眩しく見えた。
声が出せないわけじゃない。けどうまく出せれない。
病気で出せなくなったわけじゃないんだ。ただ出せれるようになるのはかなり時間がかかるってだけで。
心のなかでそう言い訳するも彼には届かない。そもそも私はなぜ言い訳してるんだろう。
待ってて。そう言えればいいのに。
もう少し待ってくれれば、声が出せれるのに。
自分の手を見つめ、はっとする。そうだ、そのやり方なら彼に伝えられる。
目が見えなくても伝えられるやり方をみつけた。
私は無言で彼の手の平をつかみ言葉をなぞった。
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