「元貴、若井と話をしてあげて。
今の若井には、元貴が必要だから。」
涼ちゃんの その言葉が、地下駐車場の薄暗い空間に静かに響いた。
その一言に元貴も、
涼ちゃんの目を見つめ返した。
元貴としっかり目が合った涼ちゃんは、
元貴の眼力に怯まず、続けて言葉を放つ。
「今はね。」
その言葉は、まるで鋭い針のように空気を刺し、
静寂が一瞬深まる。
俺を支える元貴の手に
力が入るのがはっきりと分かった。
「どういう意味?」
元貴の声は低く、とても冷たい。
涼ちゃんは微笑みながら肩をすくめる。
「そのままの意味だよ。若井には元貴が必要。
だだ……永遠に続くとは限らないよね。」
その言葉を聞いた瞬間、元貴の目から、
一瞬で温度が消える。
感情を表に出さないように抑え込んでいるのがわかるが、その冷たい視線は言葉以上に鋭い。
「それで?」
元貴が静かに涼ちゃんに問いかける。
その冷たいトーンには、周囲の空気を凍らせるような威圧感があった。
俺は二人のやり取りを見ながら、何も言えずに立ち尽くしていた。
涼ちゃんと元貴の間に挟まれ、
どうしたらいいのかわからない。
「…若井を大切にしてねって事だよっ。
元貴っ。」
涼ちゃんは軽い調子で言ったが、その目には何か深い思惑が
宿っているように見える。
「元貴、若井を頼むよ。ちゃんとね。」
涼ちゃんは 最後にそう言うと、
元貴の肩を優しく叩き、少し笑ってみせる。
元貴は涼ちゃんの言葉に何も答えず、
ただその冷たい目を涼ちゃんに向けたまま、
俺の方に振り返る。
「行こう。」
……まずい。
元貴の感情が読めない。
俺は何も言わずに頷き、元貴の後について、
マネージャーの待つ 車へ向かう。
その背中を見送る涼ちゃんは、
真剣な顔を見せていたが、
すぐにいつもの柔らかい笑顔に戻り、
小さく手を振っていた。
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コメント
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更新ありがとうございます泣 前回の涼ちゃんの言葉で安心した部分があったので今回の発言は衝撃でした 🫧様の小説に出会ってから毎日読み返しては余韻に浸るのを楽しみに生きております……。 こんな素敵な小説を書いてくださりありがとうございます
好きです 、 ぅ、 .. 見るの遅くなってすみません泣 毎回神作で私泣いてます 泣
ほんとに最高ですよ、、こんな展開になるとは?!って感じですいつも