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幼なじみとの両片思い

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幼なじみとの両片思い

7 - 嫉妬【1】

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2025年08月23日

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嫉妬


大学のゼミが終わった後。教室の外で、まなみは同じゼミの男子・圭介に声をかけられていた。

「まなみちゃん、このあと時間ある?レポート一緒にやらない?」

「え?あ、うん…いいよ~」

ふわっと笑って答えるまなみ。

──その会話を、少し離れたところからそらとはじっと見ていた。

笑ってるまなみの横顔に、圭介が顔を近づけるたび、胸の奥がざわついてたまらない。

(……あいつ、なに近づいとん)

(まなみも、なんでそんな笑顔で答えるんよ)

眉間にしわを寄せたまま、そらとはゆっくり歩いてきて、二人の間にずいっと割り込んだ。

「悪いけど、まなみ、今日はもう予定あるけん」

「え、あ、そらと……?」

圭介は少し驚いた顔でそらとを見た。

「え、でも、レポート一緒にやろうって──」

「おれと一緒にするけん、心配いらんっちゃ」

低い声で言い切るそらとに、圭介は「あ、そ、そう」と引き下がった。

残されたまなみはぽかんとそらとを見上げる。

「な、なに急に……」

「お前こそ、なんであんな笑顔であいつと話しよるん」

「え?ただのゼミ仲間やし……」

「“ただ”とか言うな」

声が少し強くなった瞬間、まなみはきょとんと目を瞬かせた。

「……そらと、もしかして怒っとるん?」

「怒っとらん」

「いや、怒っとる顔しとるよ?」

「怒っとらんっちゃ!」

そらとは目を逸らして歩き出すが、耳まで真っ赤なのは隠せてなかった。


二人でキャンパスを歩きながら、そらとの歩幅がやけに早い。

「……そらと、待ってよぉ」

小走りで追いついて袖をつかむと、そらとは足を止めた。

深く息をついて、ぼそっとつぶやく。

「……他の男に、そんな笑顔見せんなや」

「え?」

「おれだけにしとけって、言いよる」

その低い声に、まなみは一瞬言葉を失った。

胸がぎゅっと締め付けられるみたいに熱くなって、ゆっくり聞き返す。

「……そらと、それって…嫉妬?」

「……っ、嫉妬とか、そんなんじゃなか」

「じゃあなに?」

「……おれは、お前の幼なじみやけん、心配しとるだけや」

必死に取り繕うそらとの横顔は、どう見ても不機嫌そのもの。

まなみは唇を尖らせながら、そっと腕にしがみついた。

「……うち、そらとのこと、ちゃんと見よるんよ?」

「……は?」

「ずっと、そらとだけ特別やけん。……それじゃ足らん?」

その一言に、そらとは一瞬固まった。

次の瞬間、まなみの腕をぐいっと引き寄せ、至近距離で見下ろす。

「……足らん」

「っ……」

「もっと、おれだけ見とけ。……じゃなきゃ、ほんとに怒るけん」

耳元で囁く低い声と、熱い視線。

まなみは顔を真っ赤にして、声も出せないまま見上げるしかなかった。

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