#歌を描け 参加連載
曲:Find_me
題名「SPOT “LIE”GHT」
目の前に広がっているのは光の群。あれ全部私のファン。
わざわざ働いて貯めた金を払ってまで、こんな一般女性を応援してくれているわけ。
他にも使おうと思えば使える場所はあるのに、わざわざこのステージのためだけに払ってくれている。ただの、しがない一般女性に。
期待されたからには仕方ないから、この舞台で輝いて、”アイドル”を演じきってみせる。
あそこに見えるのは毎回のように来てくれているおっさん。マナーもあり、話したりすると楽しい。あそこで物凄く盛り上がってくれているのは、アイドル業界の先輩。今ではお茶の間にも知れわたった存在である先輩を熱中させられるほど、私は有名になり、ファンも増え、収入も前よりはかなり増えた。
皆のお陰でここまでこれた。皆のお陰で豊かになった。皆のお陰で私の心は満たされていった。誰かの心の中で、スポットライトに照らされて存在している私もいる。
私のイメージカラーは水色。好きだから水色にした。これが私の個性の一つ。皆も水色を見たら私を思い出してくれているようだ。
ある人からは水色の食器を貰った。別の人からは水色の花束を貰った。また別の人には水色の文房具を貰った。
もう私は水色に染まった。そう、”水色のアイドル”になった。
分かってた、
そんなの。
私は水色じゃなければ、存在価値がない。
私は水色のアイドルじゃなければ存在意義がない。
私は水色の天使じゃなければ、スポットライトを浴び続けられない。
私は、水色に染まりきった、人間のはずの何か。
皆には水色の羽と水色の輪っかが見えている。皆には私が水色の天使に見える。
あれ、私って人間だよね
私って…一般女性だよね
私ってただの普通の人…だよね
嘘だよね?私は天使じゃない…んだよね?
でも私って…何だっけ
ファンの皆は私なんか見ちゃいなかった。知ってた。私じゃなくて、水色の天使を見ていた。
理想と違ったら叩いて
何か少しでも変化したら叩いて
“水色の天使”じゃなくなればその水色の鈍器で”私”を振り回して
いいよ、私、もう水色の天使になるから
傷つくだけだから
この羽がボロボロになって飛べなくならないようにしなきゃいけないから