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「んー、無理! これは俺にもお手上げだね。人体の一部が魚類に置換されるなんて症例、古今東西の医学書を探しても載ってないと思うよ」
駆けつけたしんぺい神は、コネシマの尾ひれをふにふにと遠慮なく触診していたかと思いきや、あっさりと手を離して白旗を上げた。
まさかの専門家すら打つ手なし。いよいよ頭を抱えるしかなくなってしまった。
「でも、一つ確かなことがあるよ」
しんぺい神は手際よくゴム手袋を外しながら、宣告するように言った。
「これは本物の尾ひれってことだね。だから、常に水に浸けてないとダメ。乾燥したら酷いひび割れを起こして、バイ菌でも入ったら最悪の場合壊死するかもね」
衝撃的な事実をサラッと告げるペ神に、コネシマと揃って目を丸くする。
「えっ⋯じゃあコネシマは、これからずっと水の中で生活せなアカンってこと⋯?」
「⋯まぁ、そういうことかな。本物の人魚よろしく、ね」
しんぺい神の言葉に、コネシマはバスタブの縁に頭を預け、天井を見上げて「まじかぁ⋯」と力なく漏らした。
「⋯なぁ、俺、会議とかどうすればええん? 桶にでも入って出席するんか?」
「いや、そのデカい尾ひれが入る桶なんて、特注せんとないやろ」
俺が冷静に突っ込むと、しんぺい神が目を輝かせながら提案した。
「いい機会だし、コネシマ。俺の部屋に来ない?倉庫にある大型水槽、貸してあるげるしさ。経過観察も兼ねてどう?」
「いや遠慮しとくわ⋯まだ観賞魚になるつもりもないし」
「そっか、残念⋯。コネシマのこと舐め回すように隅々まで観察したかったんだけどなぁ」
「絶対に嫌やわッ!」
バシャバシャと激しく尾ひれを振って抵抗するコネシマ。その拍子に、俺としんぺい神の顔面に容赦なく生臭い水飛沫が飛んできた。
「⋯ちょっとシッマ、暴れんといて」
「そうだよ、人魚なんだからもう少し優雅にしててよ」
「こいつが気持ち悪いことぬかすからやろ!」
まあ当たり前といえば当たり前だが、人魚になってもコネシマは相変わらずうるさかった。
姿かたちは変われど、中身はそのままであるという事実に一抹の安堵を覚えつつ、俺はコネシマの方へと向き直った。
「なら暫くはこのバスルームで過ごすことになるな」
「まっ、ちょっと狭いけどそれしかないなぁ」
かくしてコネシマの奇妙な”人魚生活”が幕を開けた。