口では「イヤ」とか言いながら、心の中では「もっとメチャクチャにして?」と望んでしまうのは、女の性だろうか。
もしもそうならば、実篤を受け入れることの出来る女性で良かったとくるみは心の底から思うのだ。
そんなくるみに、実篤が彼女の最奥を穿った状態で動きを止めるから……。
奥の気持ちいいところにずっと触れ続けられているみたいで、快感が高まりすぎて涙があふれる。
「やぁんっ、実篤しゃ、深、い……」
くるみが苦し紛れに抗議の声を上げたのを見下ろして、実篤が吐息交じりにつぶやいた。
「違うよ、くるみっ。くるみちゃんが目一杯感じちょるけん、子宮口が降りてきとるん、よっ」
だからそんな風に感じるのだと言われても、くるみには理解できない。
涙に潤んだ瞳で懸命に実篤を見上げたら、実篤が愛しくてたまらない、という風にくるみのなかに挿入たままの欲望の質量を更に増してきた。
「んっ、ダメぇっ。これ以上っ、大きく……せんでっ」
気持ち良すぎて苦しいのだと、くるみは懸命に訴えたけれど、それすら逆効果。
「くるみちゃ、そんなに締め付けたら、俺っ、長ぉ持ちそう、にないんじゃ、けどっ」
挿入されてからこっち、実篤はくるみの中で微塵も腰を動かしていない。
ただただくるみが、膣内の〝実篤〟を奥へ奥へ誘いたいみたいにキュウキュウと肉ひだを絡みつかせて締め付けているだけなのだ。
挿入られているだけなのに死ぬほど気持ちいいのはそのせいだと、くるみ自身は気付けていない。
「……くるみん中、め、ちゃくちゃ俺に絡みついてきて……凄い気持ちええ、っ」
実篤の分身を、その形がクッキリと認識出来るくらい何度も何度も緩めては締め付けて、を繰り返しているからだろうか。
実篤がくるみを抱きしめて切なそうに「たまらなく気持ちがいい」と吐息をもらした。
「くるみちゃ、このままじゃったら……俺、動かんままに達ってしまい、そ、じゃけん、一旦抜かして?」
言うなり実篤がギリギリまでくるみの中から退くから。
くるみは寂しさから、まるで逃がしたくないみたいに実篤を追い掛けて腰を動かした。
「く、るみっ、お願い。もっと俺が欲しいって……言うて?」
実篤がくるみを抱きしめるようにして彼女の耳元に吐息を落とせば、くるみはひゅっ、と息を詰める。
「もっと俺がっ、欲しいって……こ、の可愛い口でっ、おねだりしてっ? 頼む、けん……!」
スッと唇を実篤の指の腹でなぞられたくるみは、その指に誘われて、
「――お願っ、実篤さ、をもっと……ちょぉだい、っ?」
小さく喘ぐようにそう答えたと同時、ギリギリまで引かれていた実篤の欲望が、再度深く深くくるみを貫いた。
「ひゃ、ぁぁ――っ!」
途端くるみの身体がビクッと跳ねてシーツの上、弓なりにのけ反った。実篤はその痙攣が落ち着くのを待って、ゆっくりと抽挿を開始する。
「あっ、やっ、んっ、……さね、あつさっ、うち、今、イッたけんっ。こ、れ以上はっ。……怖い、んっ。……や、あぁっ」
くるみは途切れ途切れ。実篤に少しの間動かないで欲しい、休ませて欲しいと懇願したのだけれど、 実篤はそんなくるみを見下ろすようにして、膣内の具合を確かめるように腰を動かすのをやめようとしてくれない。
「くるみ、何回イッてもええん、よ? 俺がっ、ちゃんと捕まえておいてあげるけんっ。……怖がらんでもっ、大丈夫、じゃけっ。膣内で、もっと……俺を、感じてみせてっ?」
まるで尚も一層くるみのことを乱れさせて前後不覚に陥らせたいのだとでも言わんばかりの実篤の口振りに、くるみはどうしたら良いのか分からなくなる。
無意識、実篤へ向けて「しっかりと捕まえていて欲しい」と言わんばかりに両腕を伸ばしたら、ギュッと抱き起こされ、彼の身体を両足で挟み込む格好で向かい合わせに抱き寄せられた。
自重で繋がりがさらに一段と深くなったのを感じてしまったくるみだ。
実篤の先端が、くるみの奥の奥。たまらなく気持ちいいところに触れているのを感じた。
そのまま強く抱きしめられたまま、下から揺さぶられ、突き上げるようにされて高みへと昇らされていく――。
くるみの膣内。実篤の熱く滾った分身がびくびくと震えて膜越しに欲望を放ったのと、くるみが全身を震わせて再度達ったのとがほぼ同時で。
ゆるっと弛緩して全身の力が抜けきってしまったくるみが背後へ倒れそうになるのを、実篤の逞しい両腕がしっかりと抱き留めた。
***
五月十九日。
実篤は、バースデーケーキの入った小箱と、冷えたシャンパンを持ってくるみの家を訪れた。
たまたまその日は火曜日で、翌日水曜日が二人とも休日だったから、 当然泊まる気満々でチャイムを鳴らした実篤だ。
ちなみに宿泊用品に関しては、いちいち持って来なくてもくるみの家に常備してあるから必要ない。
「実篤さんっ、お待ちしちょりました」
チャイムを鳴らしたのとほぼ同時。玄関の引き戸がガラガラッと開かれて、エプロン姿のくるみがヒョコッと顔を覗かせる。
下手したらチャイムを鳴らすまでもなく扉が開いたのではないかと言うタイミングで、実篤はちょっぴり驚いてしまった。
「く、車の音がしたんで見切り発車で出て来ちゃいましたっ」
実篤の戸惑いを感じたのだろう。
くるみが照れたようにはにかむから、 実篤はケーキが入っている箱を持っているのも忘れて、思わずくるみを腕の中に閉じ込めた。
「ひゃっ。あのっ、実篤さっ、ケーキっ」
そこで慌てたようにくるみに言われてハッとしたのだけれど。
「中身、倒れたりしちょらんですかね?」
ソワソワと心配そうな顔をするくるみに、実篤も色んな意味でドキドキしてしまう。
(ヤバイ。今日もくるみちゃん、可愛すぎじゃろ)
とりあえず、と玄関先で靴を脱いで、実篤のために用意された大きめのスリッパをはく。
「スリッパ、変えてくれたんじゃ」
「はい」
実篤が初めてここへ来た十五夜の夜、くるみに出されたのは踵が落ちてしまうほど小さなサイズのワンコのモフモフぬいぐるみ風スリッパだった。
けれど、いま実篤が履いているのは、オオカミの顔デザインの灰色モコモコ仕様。
サイズも実篤に合わせてちゃんと大きめで、しっかり足を包み込んでくれている。
そうして何を隠そうこれ、裏面がモップになっているお掃除スリッパなのだ。
くるみもピンク色のウサギタイプの同じスリッパをはいているのだが、こちらはくるみの足に合わせて小さめサイズになっている。
これ、実はどちらも今日おろしたてホヤホヤのスリッパだったりする。
というのも――。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!