異世界での戦闘にも慣れてきた。
魔法やスキルという新しい概念はあるが、基本的に敵を無力化してしまえばいい。
元の世界と何ら変わらない。
辺りのゴブリンは片付けた。
ゴブリンの一匹が奥で仲間たちにオレたちが攻めてきたことを伝えに走っていった。
既にオレらの存在は知られてしまったが、このまま奥に進む。
オレは誰が相手だろうが、一向に構わない。
向かって来る敵は無力化するだけ―――
「マリー、ゴブリンは挑発のスキルでオレに引き付ける。」
「その間に攫われた人を探してくれないか?」
「分かりました。」
「―――けどあまり無理はしないでくださいね。」
マリーはオレのことを心配しているのだろう。
しかし、この”天才”にそれは不要。
「フッ、オレは天才だぜ。」
「絶対に死んだりしないから大丈夫だ。」
進は鼻を鳴らしながら口にする。
自分が敗けるというイメージが沸かない。
寧ろ、敗北のイメージを持ってしまえば、それは現実になる。
達人であるほど、自分の勝利をイメージする。
進はそう考えていた。
二人はしばらく進むと奥の開けた広間に出た。
ここがゴブリン達の居住スペースなのだろう。
生活用品などが多数置いてある。
ゴブリン達が進たちの前からぞろぞろと出てきた。
ざっと見たところ、50匹近くはいるみたいだ。
大体レベルは15~20程度―――
さらに奥にはレベル23のゴブリンウィザードが5体とレベル26のゴブリンリーダがいた。
「マリー、それじゃあ―――、手筈通り頼む。」
進は挑発のスキルを発動し、ゴブリン達の気を引いた。
「さぁ、駆除を開始しようか。」
進はニヤッと笑みを浮かべる。
ゴブリン達は一斉に進に向かって攻撃を始めた。
進一人VSゴブリン達約50匹の戦闘が始まる。
戦闘が始まると、マリーは捕まっている人を探していた。
「攫われた人はどこかしら―――?」
マリーはゴブリンの居住スペースなどを調べる。
暫くすると、奥の方で、助けてという細いがハッキリと声が聞こえた。
マリーはそこへ行ってみると、恐らくゴブリン達に犯されたのであろう裸の女性が1人いた。
「ひどい・・・大丈夫ですか?」
マリーは彼女に声を掛ける。
「ハァハァ・・・助けてください!!」
その女性はひどく疲れた様子であった。
マリーは女性に持っていたポーションを飲ませてあげた。
女性は、こちらを見て、ギョッとする。
「危ない!後ろ!」
なんと、マリーの後ろにゴブリンが一匹いた。
進の挑発から漏れてしまったのか一匹だけそこにはいてマリーに攻撃をしてきた。
マリーは咄嗟に自分の持っていた杖で攻撃を防いだが、その力に吹っ飛ばされ、壁に激突してしまった。
「くっ・・・!」
マリーは痛みに狼狽える。
「大丈夫ですか!?」
女性は心配しているような声をかけてきてくれた。
マリーは少し意識を失いかけた。
ここで負けるの?
もしこのまま意識を失ったらあの人みたいに私が犯される?
ススムさん・・・助けて!!
そう思い、進に助けが来ることを祈る。
進はゴブリン達と戦闘中だから助けに来るわけがない。
マリーは薄れゆく意識の中、ロレーヌの村の村で起こった山賊の襲撃を思い出していた。
そうだ、お母さんは私が無力だから殺された。
もしあの時私に何とかする力があれば何度もそう思った。
またその後悔を繰り返すの?
私はロレーヌの村で誰かを”救える”人間になると決心した。
ここで倒れてしまったら、この女性は殺されるかもしれない。
マリーは寸でのところで、意識を回復し、ポーションを一気に飲んだ。
マリーが意識を留めることができたのは、死に際の母親のあの悲しい顔を思い出したからだった。
傷は急速に癒え、戦えるまでになった。
『私がこのゴブリンを殺す』
そうマリーは心に刻んだ。
この二日間魔法を練習していたマリーは、一つの技を考えていた。
青魔法で出す水を極限まで薄く広げて回転させることでとんでもない切れ味を出すんじゃないかと。
そう思い、この二日間マリーは、それだけに集中して練習を繰り返し、ついに大木を斬ることに成功していた。
「青魔法:ウォーターカッター!」
ゴブリンに向けて半径1メートルほどの水のカッターで攻撃を始めた。
キキーとゴブリンは驚いていて躱した。
「なっ…!」
マリーは躱されてしまったことに動揺した。
「だったら当たるまで繰り返すだけ!」
ゴブリンはマリーの攻撃を避けて、また持っていた剣でマリーを攻撃してきた。
そうだススムさんなら―――
マリーは壁を背にし、ゴブリンの攻撃を杖でガードした。
さっきは不意打ちで吹き飛ばされたが真正面から受け、しかも上体を少し下げたので、吹き飛ばされずに済んだ。
攻撃を受け止めてゴブリンが身動きが取れないところで、マリーは先ほどの青魔法を唱えた。
「青魔法:ウォーターカッター!」
マリーの魔法はゴブリンの体を真っ二つにすることに成功。
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