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二宮 × 大森
(攻) (受)
恋人になる寸前―?
nnmy side
俺がそう呟いて、シャツをつかむ元貴の手に、自分の手をそっと重ねた。
そのぬくもりに、元貴の肩が微かに震える。
二宮「俺は、元貴の10年以上先を歩いてきた。
失敗も、後悔も、全部味わってきたんだ。
だから分かる、元貴の今抱いてる感情が、とれだけ危ういかも――」
大森「危うくなんかない」
元貴が食い気味に言った。
目を逸らさず、まっすぐに見つめてくる。
大森「…確かに、子供の頃だった僕は、何も知らなかった。
だけど今は違う。ニノさんを見て、ニノさんの背中を追いかけてきたこの何年も、
全部、本気だった」
俺の感情が少し揺らぐ。
年齢差を言い訳にして、自分の気持ちをごまかしてきた。
それが、元貴のまっすぐな言葉に1つずつ打ち崩されてゆく。
二宮「元貴は…ずるい……」
大森「知ってる、笑
でも、ニノさんもずるいよ。僕がこうやって想ってるの、ずっと前から気付いてたでしょ?」
図星を突かれて、俺は ふっ と笑った。
その笑いに、微かに滲んだ諦めと、どこか安堵のようなものが混じっていた。
二宮「こんなにも誰かに必要とされるなんて、思ってなかった。
……もう少しだけ、甘えてもいい?」
そう言って、俺は元貴を抱き寄せた。
年の差も、過去の傷も、何もかも一度脇に置いて、
ただ「今、この時間」を2人で確かめるように。
しがみつくようにその胸に顔を埋めた元貴の声が、小さく響いた。
大森「いかないで、って言ってよかった…」
二宮「……言ってくれてありがとう」
俺の腕の中で、元貴は静かに目を閉じていた。
こうして抱きしめられるのは、初めてではなかった。
でも、それが「恋情」として交わされたのは、今日が初めてだった。
しばらくの沈黙の後、俺がぽつりとつぶやく。
二宮「…ご飯、食べた?」
大森「……ん、食べてない」
二宮「奇遇だね…俺もだよ、笑」
大森「じゃあ……作ろっか」
二宮「いや、今日は俺がやる」
大森「…珍しい」
元貴が くすっ と笑うと、俺は少し照れくさそうに視線を逸らす。
二宮「せめて 最初の夜 ぐらい、格好つけさせてよ」
大森「……最初って…」
彼が反芻するようにその言葉を呟く。
“最初の夜”――
そこにある「続いていく夜たち」を想像して、胸の奥がじんと熱くなる。
大森「うん、分かった…僕は、お皿くらい出して待ってる」
二宮「ありがとな…笑」
夕飯を片付け、ソファーの電気を落とすと、電気には静寂が戻った。
カーテン越しに月明かりが差し込む。
俺は立ち上がり、ゆっくりと寝室のドアに手をかけた。
その背中を、元貴は目で追っていた。
呼び止めるつもりはなかったのに――、声が漏れた。
大森「……一緒に寝たい」
ドアノブにかかった俺の手が、止まる。
二宮「…冗談言うなよ」
大森「言ってない」
ゆっくりと立ち上がった元貴は、まっすぐ俺に向き合う。
今までなら、視線を逸らしていたかもしれない。
でも、もう逃げる必要はなかった。
大森「今日がはじまりの日だって、そういったのはニノさんでしょ?」
俺は、何も言わずに寝室のドアを開ける。
無言のまま中に入ると、背後からきた元貴の気配を感じて、そっと振り返った。
二宮「本当にいいの?」
大森「……やっとここまで来たのに、今更止まれないよ」
俺達の間に、距離はもうなかった。
言葉も、駆け引きもいらなかった。
ただ、そっと手が伸びる。指先が頬に触れた瞬間、俺は目を閉じた。
そのまま、唇が重なる。
深く、けれどどこまでも優しく、相手の温度を確かめ合うように。
シャツのボタンを外す音も、シーツの軋む気配も、
すべてが今夜だけの静かな音楽のように、部屋に溶けていった。
二宮「…怖くないの?」
その問いに、元貴は一瞬黙ってから、首を振った。
大森「怖い……けど、それより、ニノさんに触れたい」
俺は小さく息を吐いて、元貴の髪をそっと撫でた。
二宮「じゃあ、遠慮なく甘えてね。
全部、受け止めてあげる」
その声に、元貴の目が潤んだ。
ただ身体を重ねることが目的じゃない。
ずっと抑えていた気持ちを、ようやく伝えられた夜。
俺達の心が、ようやく同じ場所に辿り着いた証。
月明かりの中、何度も名前を呼び合いながら、俺達は夜の深さに身を委ねていった。
言葉よりも深く、確かめ合う夜だった。
次回、♡1000
コメント
2件
なんかちょっと切ないかんある