テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
誰も知らない、高嶺の花の裏側4
第5話 〚体育終わりの再会と、海翔のモヤモヤ〛
3時間目の体育が終わり、教室へ戻る廊下。
まだ少し息が上がっていて、澪の髪には体育館の空気がほんのり残っていた。
(……やっぱり、ちゃんと本人に聞いてみよう)
さっき真壁恒一と話して少し安心したけれど、
それでも予知の中の”泣いていた西園寺恒一”が忘れられなかった。
澪は意を決して、西園寺恒一の方へ歩いた。
「西園寺君、ちょっと…いいかな?」
声をかけられた西園寺恒一は、一瞬固まり、
その後ゆっくりと優しい顔になった。
「え? あ、澪さん……。もちろん、大丈夫だけど。」
そう言う声はいつもより柔らかく、
どこか“嬉しさ”が隠しきれていなかった。
澪は、予知の話ではなく、あくまで“本人の今”を心配して聞いた。
「最近、辛そうだったから……大丈夫かなって。」
西園寺恒一は少し驚いて、そしてゆっくり笑った。
「心配してくれてありがとう。
本当にもう大丈夫。
澪さんがちゃんと向き合ってくれたから。」
その声は、澪が思っていたより温かくて真剣だった。
澪はホッとして、少しだけ微笑む。
その瞬間――
廊下の反対側。
海翔は、また“ガン見”していた。
(……また話してる)
西園寺恒一の表情が優しいことも、
澪が安心したみたいに微笑むのも、
全部見えてしまう。
澪の安全確認――のはずだった。
でも胸の中はまたモヤモヤして、落ち着かない。
(別に…変な意味じゃないって分かってるけど ……なんか、嫌だな)
理由は分かっている。でも言葉にするのが照れくさくて、
海翔は自分の感情を飲み込みながら、廊下を歩き出した。
心の奥では、さっきよりちょっとだけ強い“嫉妬”が疼いていた。
澪と西園寺恒一の話は、穏やかに終わった。
澪はまたひとつ、胸の不安が軽くなった。
だけど――澪はまだ知らない。
海翔が自分を“守るように見ている”ことも。
そして“少しずつ嫉妬している”ことも。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!