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──傍らでシーツがこすれる衣擦れの音がして、目を開けた。
彼女が先に起きていて、自分が寝過ごしたことに気づく。
女性と過ごした翌朝に、こんなにも安らいだ思いでいられたことは一度も……そう感じると彼女の存在の大きさが知れて、ぎゅっと胸にその身体を抱き寄せた。
抱えた腕の中に体温が伝わり愛おしさが込み上げる。
求めてやまない気持ちのままに口づけると、
彼女が口を開いて、「まだ、なんだか信じられなくて……」と、心もとなく呟いた。
『……焦らなくてもいいから、その気持ちを大事にしていなさい。そうすれば、おまえもきっといつかは、本当の自分の気持ちに気づくはずだから』
かつて父の言っていた言葉が頭に蘇って、
「急がなくてもいいので。焦って答えを出そうとしなくてもいいのですから」
改めてその想いを噛み締めるように、同じようにも口にした──。
そうして気持ちを確かめようと付き合いを重ね、数ヶ月が経って、ふたりで食事をした帰り道で──
「先生……」
キスから顔を上げた彼女に、ふと呼びかけられた。
「……うん?」
暗い夜道を街灯が照らす中で、彼女から「もうこんな風にお付き合いを始めてから、どれくらいがたちましたか…?」と、問いかけられて、
「三ヶ月ですね…そろそろ」答えて、「季節が変わって、また寒くなってくる…」呟いて、寒さから守るように、両腕にその身体をそっと抱いた。
抱えた胸の中で、彼女の鼓動が早まっているようにも感じて、何か言わなければならないことでもあるのかと目を落とすと、
「……私、先生と一緒にいられて、幸せだなって……」
彼女が、そう切り出して、
ゆっくりとひと息を吸い込んで私に顔を向けると、言葉を探しつつ話し始めた……。
「お試しのような気持ちでお付き合いをしてきて、これまでずっと、自分でいろんなことを思って、いろんな先生も見てきて……
感じたことも、考えたこともいっぱいあって……迷うこともいろいろあったけれど、
だけど、ただ一緒にいて、幸せに感じる気持ちもあって……
だから、今なら、あなたの前で素直になれるって……」
彼女から伝えられた真っ直ぐな想いを受け止めて、
「……私に、応えてくれるのですか…」
そう口にして微笑むと、彼女も笑いかけて「はい…」と、頷いた──。