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10月31日。

それは、秋が終わり、冬が始まる日。

死者の魂がこの世界に戻ってくると言われている日。

そんな1年に1度の日について、私たちの村には昔から言い伝えられていることがあります。


死者に捧げよ、甘美なものを。

さすれば、願いは叶えられん。


だから村の人たちは、この日のために、死者達の大好物だと言われる、甘いお菓子をたくさん用意し、死者達に願うのです。

もし、そのお菓子を死者達が気に入れば、気まぐれで誰かの願いを叶えてくれるから。


ただ、私たちの村の人たちのほとんどは、その言い伝えを完璧に信じているわけではありません。

お祭りとして、楽しむに過ぎない人たちの方が、圧倒的に多くなっていました。


ですが、私は違いました。

心から、その言い伝えを信じていました。

いいえ。信じたかったのです。


だから、今年こそはと……採れたての自家製かぼちゃを使った、祈りを込めたパンプキンパイを作り、ほとんど村の人たちが参らなくなった村はずれの祠まで、死者達に捧げに出かけました。


「ああ……汚れてしまって……かわいそうに……」


本当は、この祠に捧げなくては、死者達は気づかないというのに、人々は忙しさにかまけて、祠まで行かなくなっていました。

そのため、植物の蔓が絡んだり、泥がついているという、哀れな姿になっておりました。

ですので私は、身につけていた服を破り、綺麗に磨くことにしました。

私の力でできる精一杯で。


そうして、どうにか美しさをほんの少し取り戻した祠に、焼きたてのパンプキンパイを捧げて、私は祈りました。


「あの人の子供を産ませてください」


その願いは、私にとっては奇跡が起きない限り、叶うことがありませんでした。

だからこそ、この10月31日という日に賭けるしか、私にはなかったのです。

そして今年が、この願いを死者に伝えられる最後の年であることを、私自身はすでに分かっておりましたから。

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