この作品はいかがでしたか?
34
この作品はいかがでしたか?
34
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「それで、佐々木、お前は?」
「私は……」
彼女は一瞬ためらうような仕草を見せた。しかし、すぐに言葉を続ける。
「私は、ベルが鳴ったとき、部室にいました。そこに、拓海のユニホームとか、置いてあるから……」
「加藤の?」
「はい。拓海はサッカー部に入っていて、練習着をいつもロッカーに入れてあったから。……授業さぼってごめんなさい」
「まあ、それはいい。次、ミスター・ロバートはどうなんだ」
「ワタシは、非常勤ですから、避難訓練への参加義務はありません。デモ、午後の授業があったから、学校に来ました。もう避難訓練が終ったのかどうか、確認したくて、体育館を覗いたのデス」
「ふむ……。佐藤はどうだ?」
佐藤は、少し考えてから、小さな声で言った。
「私も……部室にいたわ」
「本当か?」
「うん。私、文芸部の部長だし。文化祭の準備で、部員の書いた原稿をまとめていたの。だから、みんなと同じように、体育館に行けなかった。本当に、それだけなの……」
「そうか……。分かった」
僕は前日の先生とのやり取りを思い出していた。
「この作戦にはいくつか欠点がある」
先生はそういって説明を始めた。
「なるほど、睡眠ガスで人間は眠り、ゾンビは残る。だが、残ったものの中には、たまたまガスを吸わなかった人間も混ざっているかもしれない。それから、ゾンビはともかく、黒魔術師は姿を現すとは限らない。異変に気づいて、姿を隠して様子をうかがっているかもしれない」
なるほど、そうなると、姿を現すのは、①偶然助かった人間、②ゾンビ、③黒魔術師で、全員ゾンビの可能性も、逆に全員偶然助かった人間の可能性もある、ということだ。
「だけど先生、学校に潜んでいるゾンビの総数は暴けるよね」
「そうだな。いずれにせよ、ゾンビは集まった人間以下の数ということになる。敵の総数が分るのは大きい。まあやってみる価値はあるだろう」
そして今、先生と僕以外でこの場に現われたのは、佐々木絵美、佐藤里香、外国人講師のロバート・ホフマンの3人だ。この中に黒魔術師はいるのだろうか? 普通に考えれば、一番怪しいのは外国人講師のロバート・ホフマン氏だ。次に怪しいのは佐々木絵美か佐藤里香のどちらかだ。二人はたまたまガスに巻き込まれない場所にいたといった。そんな偶然、あるだろうか? もし二人のうちどちらかが、あるいは両方がゾンビだとしたら……。もう少し情報が欲しい。(続く)