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家のドアを開けた瞬間、安心感が押し寄せる。
「おかえり」
亮の声に、自然と肩の力が抜けた。
「ただいま……」
泣き疲れた顔を見られたくなくて、俯いたまま応える○○
亮はそっと手を伸ばし、○○の肩に触れる。
「落ち着いたか……」
「……ちょっとだけ」
小さく答える○○に、亮は微笑みながら頭を撫でる。
「お風呂入る?」
「うん……」
シャワーを浴びたあと、○○は髪を乾かさずにソファでうとうとしてしまった。
亮は気づき、静かに後ろから抱きしめる。
「……疲れたな。髪、乾かすから」
背中に回された腕の温もりに、○○は思わず小さく身を預け頷く。
手際よく髪を乾かす亮の指先は優しく温かく、まるで「もう学校のことは忘れていいんだ」と囁いてくれているみたいだった。
「今日も頑張ったな……」
低く甘い声が耳元に響く。
「辛かっただろ。でも、もう大丈夫。俺がいる」
○○は涙をこらえながら、亮の名前を小さく呼ぶ。
「亮さん……」
「ん……よし、全部乾いたぞ」
手のひらでそっと髪を撫でられる感覚に、胸の奥がじんわり温かくなる。
そのまま後ろから抱きしめられ、耳元で甘い囁きを聞きながら、○○はゆっくりと安心して眠りに落ちていった。
学校での理不尽な一日も、海での笑顔も、全部亮さんの腕の中で溶けていく――。
夜。
○○は亮の腕に抱かれたまま、ベッドに体を預ける。
学校での理不尽な一日や、放課後の辛い時間を思い出すと、胸がぎゅっと締めつけられる。
「今日も頑張ったな……」
亮の低く優しい声。
背後からそっと抱きしめられ、耳元で囁かれるたび、体中の力が抜けていく。
「もう誰にも邪魔されないから……俺が全部守る」
手が肩から腰に回され、温かさと安心感が全身に広がる。
○○は小さく息を吐き、亮の胸に顔をうずめる。
「亮さん……」
「ん……お前、よく頑張ったな。俺のそばで眠れ」
そのまま二人は、外の世界のことを忘れるように、ゆっくりと深い眠りに落ちていった。
翌日学校に入ると、昨日までの重い空気は嘘のように消えていた。
あの女子たちは、海や校庭で亮さんに怒られたことが怖くなったのか、今日は学校に来ていない。
「……なんか、静かだな」
○○はほっと息をつく。
放課後、幼馴染の蓮が声をかけてきた。
「よかったら、ちょっと遊びに行かない?」
「うん、行く!」
学校の緊張感から解放され、久しぶりに心から笑える瞬間だった。
学校を出る前、○○は亮にメールを送る。
『今日、蓮と遊びに行くから迎えはいらないよ!』
メールを受け取った亮は、画面を見つめて眉をひそめる。
――嫉妬が胸に小さく芽生える。
「……蓮って、男だよな……」
でもそれは、守るだけじゃなくて、特別な存在だから感じる感情だった。
街に出た二人は、ゲームセンターでプリクラを撮ったり、おしゃべりしたり。
蓮の笑顔に、○○も思わず笑みがこぼれる。
「楽しいね……!」
「うん、久しぶりに思いっきり遊べた」
家に帰ると、玄関先で少し不機嫌そうな亮が待っていた。
「……帰ったのか」
「うん、ちょっと遊んできた」
「ふーん……楽しかったか?デート」
「え?デートじゃないよ〜」
○○は小さく笑い、亮に駆け寄る。
でもその手には、蓮と撮ったプリクラがひょっこり見える。
亮の目が一瞬、鋭く光った。
「……これ、誰と撮ったの?」
○○の肩に手を回し、後ろからぎゅっと抱きしめる。
「……俺だけの○○じゃなかったのか」
二人のプリクラを見つめながら、亮は○○がただの同居人ではなく、特別な存在であることを改めて実感した。
「……まあ、いいけど」
低く囁く声に、○○は思わず胸がドキドキする。
「亮さん……」
「次はちゃんと俺が一緒に行くからな」
家の中に、甘くて少し切ない、二人だけの空気が流れる――。
第5話
〜完〜