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油断したというより、そもそも気にしていなかった。
こんなとこでそんな事するやつがいるなんて思ってもみなかったし。
冬の厳しさが過ぎて空気が和らいで来た頃、奏斗の休みに合わせて出掛ける事になった。
少し離れたところにある洋食屋が美味しそうだと話していて、そこで昼食を食べる事だけ決めて家を出た。
🍷「メニューどんなのあるんだっけ?」
🌸「ん〜、まって…」
運転中の奏斗に変わって、行く予定のお店のHPを確認する。
ハンバーグやビーフシチュー、グラタンなど主だったものは一通り揃っていた。
私が食べてみたいのはこれ。
🌸「んでこれよ。大人のお子様ランチ」
🍷「あ〜あったね」
🌸「これ頼むんだ…!」
🍷「え、それって普通にレストランとかで頼めないの?」
🌸「子供連れならともかく大人だけで行くとキッズメニューだから無理なんだよね」
🍷「はぇ〜〜〜」
あーだこーだ話しているうちに目的地に到着。
昼時なので店内は埋まっていたけど、予約していたおかげですんなり席に着けた。
頼むメニューも決まっていたので着席と同時に注文も。
他愛もない話をしつつ料理が出来上がるのをを待っていた。
🌸「お子様ランチ大満足でした」
🍷「俺も〜意外とテンション上がったわ」
🌸「でしょ!?お子様ランチ最高なんだよ…」
🍷「こだわりすぎじゃね?とか思ってたけどそんな事なかったなー。色々食べれて得した気分」
🌸「いいとこ取りだからね。あと旗」
🍷「旗www」
店を出て車に戻ろうとした時。
🍷「あれ」
奏斗はごそごそとあちこち手を突っ込んで、何かを探している。
🍷「車の鍵…」
🌸「え」
🍷「無い…ちょっと店内戻ってみるから待ってて」
言うやいなや店の中へ戻っていく。
入口付近で取り残された私は、すぐに見つけて戻って来るだろうと思いながらスマホを弄っていた。
ふと目の前に人の気配を感じて戻って来たのかと顔をあげる。
「あ、ほらあたりじゃん」
見知らぬ男2人組が目の前に立っていた。
誰だこいつら。
つーかあたりっつたか今?
「ひとりすか?ここで飯食うの?」
「俺ら今からなんだけど一緒しない?奢るし」
え?まさかと思うけどこれナンパされてる?
付近に他に人は居ないかと見渡す。
「お姉さんの事誘ってるけどw」
まさかだった。
どうしよう、うざい。
変に関わりたくないし、無視しようともう一度スマホへ視線を落とす。
私は何も見てない聞いてない。
「えー無視された!」
「ねぇ聞こえてるよねー?」
雑音がすぎる、うるさい、でも反応してやるもんか。
鬱陶し過ぎて永遠に感じる時間の中、奏斗早く戻ってこいと願う。
そうしているうちに痺れを切らしたのか、男のひとりがこちらに向かって手を伸ばしてきた。
まずい、と反射的に後ずさったところで、後ろから慣れた感覚が身体を包み込んだ。
🍷「…………………」
よかった、戻ってきた。
奏斗、と思わず口をついて出そうになったけど、やんわりと口を覆われて言葉にはならなかった。
一瞬だけこちらに柔らかい視線を向けたあと、ナンパ男達を睨みつける。
🍷「…他当たれば?」
普段私や同期達に向けるものとは違う、怒りを孕んだ低い声。
あぁ、この人ってこんなにわかりやすく怒る事があるんだな。
そんなことをぼんやりと考えながら目の前の男達を見ると、これまたわかりやすいモブよろしく舌打ちと睨みつけるのコンボを決めて店の中へ入って行った。
奏斗はそれをしっかりと見送ってから、私の手を引いて車に乗るまでをきれいにエスコートした。
自分も運転席に乗り込んだところで緊張状態を解く。
🍷「…遅くなってごめんね、声掛けられただけだった?他に何かされてない?」
🌸「だい、じょうぶ」
手を絡めて、髪をそっと撫でながら、優しい声色で。
そう問われて一気に身体から力が抜けていくのがわかった。
力が入りきらない手で握り返すと、髪を撫でていた手をするりと首の後ろに回して引き寄せられる。
🍷「よかった…まじでびっくりした…」
🌸「ごめん……」
🍷「🌸悪くないでしょ。こんなとこでナンパしてる馬鹿がおかしいだけで」
🌸「ん〜……」
ぐりぐりと奏斗の肩に頭を押し付ける。
🍷「今日はもう帰ろうね。家のほうが落ち着くでしょ」
せっかくの休日。
久しぶりに2人で出かけて、いっぱい遊ぼうと決めて出てきたのに。
何よりも私の心配をしてくれる事が嬉しすぎて泣きたくなった。
多分ちょっとだけ涙が滲んでいたけど、ぐっと堪えて顔を上げると、精一杯の笑顔を向ける。
🌸「うん、ありがと」
奏斗は返事がわりにもう一度髪をするりと撫でて、車を動かした。
🌸「ねぇ、コンビニだけよって欲しい」
🍷「了解〜なんでも好きなの買お、ついでに夜の分も」
いい休日と言い切れる日にはならなかったけど、帰ってからずっと、いつも以上に優しい奏斗に甘やかされて溶かされてどうにかなりそうだった。
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お題決めたはいいけどめっちゃ難産…