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qn視点
俺が倒れてから約1週間。ようやく退院することができた。久しぶりの我が家に、ホッと息をつく。これでまた、いつも通りの日常が送れる。
そう思っていた。
全てを楽観視しすぎていた。
「…なんか、体動かしづらいんだよなぁ、…。」
退院する1日前から、背中の右側の方が固くなっていた。動かせはするが、自由には動かせない。なんとなくの違和感を覚えたまま、退院した。
今日は久しぶりの撮影だ。dzさんやorは来なくていい、と言っていたけど、さすがにそろそろやらないと、腕が落ちる。
パソコンを起動し、Minecraftを立ち上げる。久しぶりに聞くこのBGM。カクカクとした世界。懐かしさに少し口許が緩む。
軽く、2回ほどエンドラを倒すと、撮影の時間になった。discordに入り、マルチの準備をする。
mn「あれ、qnじゃん。」
「やっほ。珍しいね、この時間に来るの。」
mn「珍しいってなんやねんw 別に、たまたまね。」
「たまたまか。」
久しぶりに聞く、mnの声。自分の相棒の声。mnの低音ボイスが心地いい。今日の撮影用のワールドに入る。入った途端見えたのは、大きな屋敷だった。
「…mn、今日って…。」
mn「…だな。」
こんな豪邸が登場する時。それは決まって、大富豪おじいちゃんの企画の時だ。さて、今日は何をさせられるんだ?後ろを振り返ると、桜の花びらの山があった。
「まさかだけどさ、これ全部掃除しろみたいなやつじゃないよね?」
nj「そのまさかじゃよ。」
mn「っくりしたぁ、」
急にnjの声がして、驚きから肩が震える。どうやらmnも同じようで、イヤホンから、驚いたような声が聞こえてきた。
「nj〜…。キャラ作り早いね。」
nj「まぁ、早くして慣れておいた方がいいからのぉ。」
mn「いいのか…?」
njは普段、bnさんやmnと同じ、優しい低音ボイスだ。だが今日は、大富豪おじいちゃんになりきる為、おじいちゃんボイスになっている。これはこれで好きだけど。
それから5時間。桜の花びらの山を掃除し続けた。
最初はちりとりで。次に掃除機。そして、掃除機アップグレードパーツ。最後に、蝶々ロボ。
やはり、最後のロボが1番快適だ。みんなウトウトしていたのが声でわかった。俺も、心地いい音にウトウトし始める。なんでこんなASMRみたいな音出せるんだよ、このゲーム。
そんなこんなで終わった企画。やはりこのシリーズは時間がかかる分、体力を削るが、みんなと雑談できる時間が多いため、俺の中でのお気に入りランキングのトップにくい込んでいる。
dz「いやー、お疲れ様〜。」
bn「今回、長かったなぁ。過去最長じゃね?」
or「わっかる、3個目がアップグレードパーツなの、未だに怒っとるもん。」
mn「まじそれ!どうしてくれるの〜大富豪おじいちゃん〜。」
nj「いや、今はもうnjだから。」
「うっわ、逃げたこの人。」
こんななんて事ない話。でも、この雰囲気が心地よくて。どうしようもなく幸せで。どうしようもなく楽しくて。
だから、俺は自分の体に起こっていた異変の事を忘れていた。
qn視点
あの後もう1本動画を撮り、少し雑談と会議をしてからみんなと解散した。今から自由時間…といきたいところだが、dzさんに呼ばれていたことを思い出し、電話を待つ。
プルルルップルルルッ
「はい、もしもし。」
dz「もしもし。qn?今で大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
今回の電話の目的。それは、俺の抱えているこの病。涙石病についてだ。あれからdzさんは更に調べてくれたらしく、その事を共有したいそうだ。さすdzというところだろうか。
dz「まずね、qn。人体結晶化は知ってる?」
「…知ってます。最終的に〜っていうやつですよね?」
dz「そうそう。まだその兆しはなさそう?」
「はい、無いです。」
そういえば、体固くなってきてたっけ…と、異変が頭を過ぎったが、これはきっと関係ないだろう、と、口に出すことはしない。
dz「…一応、僕が調べたこと言っておく。」
「ありがとうございます。」
dz「…人体結晶化の仕方。まず、体のどこかが宝石で覆われ始める。」
「……、」
dzさんの話を静かに聞く。覆われる…かぁ、…。…覆われる?
dz「覆われ始めるとね、段々体が動かなくなっていくの。だいたいの人は背中辺りから始まるらしいよ。」
「…せなか、」
心当たりがありすぎる。たしかに最近、右の背中が動かしづらいことが多い。まさか、もう始まっている…?
少し怖くなり、椅子の上で体操座りをし、自分の体を抱きしめる。
dz「というか、前提条件なんだけど、…。…ごめん、qn。」
「……?何がですか?」
dz「qnは、orのどんなところが好きなの?」
「っへ、…?!// え、ぁ、…//」
dz「ゆっくりでいいから、話してみて。」
ゆっくりと息を吸ってから話してみる。俺が、orを好きになった経緯。orの好きなところ。だいたい5分くらいだろうか。話していると、dzさんからストップがかかった。
dz「おっけー。とりあえずストップね。ありがとう。」
「…はい、」
dz「…qnさ、今の5分の間に、宝石は零れた?」
「はい、零れました。…3つくらい…?」
スマホの先で、dzさんが息を呑む音が聞こえる。どうしたのだろう。何かあったのか、と少し心配になって、声をかけようとする。
dz「…それ、痛かった、?」
「いいえ。…なんか、退院してから、痛くないんですよね。」
dz「……ッ、!!」
dz視点
qn「いいえ。…なんか、退院してから、痛くないんですよね。」
qnのその言葉に、思わず言葉が消える。
昨日調べた内容が、頭の中に浮かぶ。
『人体結晶化』
初めはとても痛かったはずの、痛み。だが、流しすぎによって感覚が麻痺し、段々と痛くなくなってくる。
そしていつしか、宝石を零すことによる痛みを全く感じなくなる。
痛くなくなるならいいかもしれない…。そう思うだろう。だが、この症状は、死へと繋がる第1歩なのだ。
宝石を流し続け、痛くなくなった時。涙石病にかかった人の体が、宝石化___人体結晶化が始まる。
日に日に体が宝石に包まれていき、最期まで放置すると、宝石人間になり、命が終わる。
qnのさっき言っていた症状。「痛くない」これは、人体結晶化への1歩に違いない。まずい、どうすれば。このままじゃ、qnは…。
とにかく、このことを伝えなければ。
僕は言葉を選びながら、しっかり全てを伝えた。
qn「…つまり、俺は…人体結晶化が始まっている…と、?」
「……うん、」
qn「…だから、…。」
だから、と小さく呟いたqn。きっと、思い当たる節があったのだろう。このままじゃ、qnは死んでしまう。
ハードルは高いと思うが、気持ちを伝えて欲しい。お願いだから。このまま死んで欲しくない。
だって、qnは
俺の大切な仲間だから。
「…ねぇ、qn。orに告白しない…、っ?」
qn「……。俺、は……」
#dzl社