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___ピピッピピピッ
(んん〜、、)
「ふわあぁー・・・」
…5時30分。今日も同じ時刻で、1日が始まる。
ぼーっとしながら歯を磨き、ふわふわとした猫っ毛にアイロンを通して髪型をセットする。
眉毛を書いて、まつ毛を上げて、薄づきのチークを塗って、淡い色のリップで仕上げる。これが私のスクールメイクで、ルーティンだ。
走るのは苦手なので、運動がてら汗をかかない程度の素振りをしてから学校に行く。体型維持のため、朝ご飯はフルーツやサラダなど肌にも栄養のいくものを食べることが多い。
「いってきまーす!」と家族に声をかけ、学校にむかう。
雲ひとつない青空と心地の良いすずしさで、気分があがる。
(こういう季節いちばん好きだな〜!!)
「風おはよ〜!」
「あ、瀬波ちゃんだ」
「顔ちっっさ…細……!!」
朝からみんな元気だなぁ〜。
…みんなの方がずっとずっと綺麗なのに、みんなは”誰”を見てるんだろう。
「風ー!!おはよう!!!!!」
「あ、新田おはよ〜今日も元気だねぇ」
「昨日いい事があったからな!!!!風に話したかったんだよ!!」
「もしかして、例の後輩くん?」
「そー!!!光が弁当作ってくれてさ!!めちゃくちゃ美味かったし週一で昼食うことになった!!!」
「…え、後輩くんお弁当作ってくれたの?わざわざ?」
「そうなんだよー!」
こーれは…順当に考えたら敬愛なのかもしれないけど、前に新田から見せてもらったメールの1部から考えたら…..
「後輩くんと、仲良くなれたらいいね」
「おう!!!!…ていうか、あのさ」
「ん?」
「想に、話さないのか?その…」
「歯切れが悪いなぁ。…でもうん、私も新田に相談しようと思ってたところ。」
想くんが私のことを本気で好いてくれているのはストレートに伝わった。その真剣さに心打たれ、電波するように私も好きになった。お互いのことをたくさん話し、知れたなら。そう思う。
だけど、彼の知らない私の過去は、彼がおもうよりきっと複雑で、その事実だけで冷められる可能性だって大いにある。
それが、怖いのだ。
「…私さ、ありがたいことに人から告白してもらうことは時々あって。」
「?知ってるぜ。うちの学年、、いや学校内でも随一ってくらい可愛いしなー!!」
「ふふ、ありがとう。でも、付き合うのは好きな人がいいから全部断ってたの。…想くんと直接話したのは最近のことなのに、みんなとは違くて。少し話しただけで、胸がいっぱいになった。」
「…そっか。」
「だから、怖いの。もし全部はなして、冷められてしまったら。どうすればいいの?」
「今風のその、過去のこと知ってるのは俺くらいか?」
「うん。本当は誰にも知られずにいるつもりだったんだけど、新田は幼なじみだし。」
「風が1人で抱え込むとこなんて見たくないよ。…それに想はそれで冷めるような奴じゃないって、そう思うぞ。」
「そう…かな。」
「風せんぱーい!!!!!!」
「に、新田先輩!!」
重なるふたつの声に振り向くと、かわいいかわいい後輩たちが走って、例の後輩(光)くんは新田の元へ、想くんは私の元へ来た。
「あれ、2人とも早いねぇ」
「何となくです!!でも先輩に会えたからラッキーです!」
心の底から嬉しそうに笑う恋人が、とても愛おしく思えた。
気付けば私は、背伸びして彼の頭に手を伸ばしていた。
「?先輩?」
そう言って屈んでくれたので、頭を撫でた。
「私もね、あえて嬉しい。想くん。」
「せ、先輩!!!!!」
想くんはすぐさま私を抱きしめ、優しい目で私を撫でた。
「俺の方が会いたかったです」
頬が紅潮するのを自覚しながら、照れ隠しにこう言った。
「どうかなぁ?…あとね、みんな見てるよ」
彼は周囲の目に気付いたが、その時にはもう遅く、2年男子に追いかけ回されながら校舎へ入っていった。
「ふふ、頑張ってね、想くん。」
話すのはまだ、もう少しだけ、後でいいかな。