翔の新たに覚醒した力が、父親を一気に押し返していく。しかし、父親はその圧倒的な威圧感を放ちながらも、冷静に状況を判断し、決して諦めることはなかった。
「ふん、力を見せつけるのは良いが、未熟な子供だ。」父親はその言葉を吐きながら、手を一振りした。その瞬間、翔の周囲に強烈な圧力が加わり、翔はその重さに耐えきれずに膝をつく。
「翔!」楓は叫びながらも、再び彼を守ろうと力を振り絞ろうとしたが、彼女もその場に立つことすらできなかった。父親の力が、楓にも強く作用し、彼女の足元が崩れそうになった。
翔は必死で立ち上がろうとしたが、父親の力に圧倒されて動けなくなる。周囲が歪み、空間がねじれていくその中で、翔は自分が限界に達していることを感じた。どんなに力を振り絞っても、父親の異能の前では無力だと感じていた。
「くっ…!」翔は血を吐き、手を地面に突き刺すようにして支えようとした。しかし、父親の冷酷な視線が彼に向けられた瞬間、翔の体が弾けるように打ちのめされ、空中に飛ばされた。
「さよならだ。」父親の冷徹な言葉とともに、翔の体は地面に叩きつけられる。彼の力は完全に消え去り、周囲にはただ静寂が広がった。
楓はその光景を見て、体が震えた。翔が敗北した、その瞬間を見届けることができなかった。
「翔…!」楓は涙をこらえながら叫んだ。その叫び声が、静寂の中でひびく。しかし、翔はもう動かない。
父親はその場で冷酷に立ち尽くし、楓に向けて一瞥をくれた。「お前も、無駄な抵抗はやめておけ。」その言葉に、楓は力をなくし、膝をついて倒れ込んだ。
翔の死を前に、楓の心は完全に砕けていた。彼女はまだ信じられなかった。翔が倒れたことで、彼女の中の何かが崩れていった。
「こんな、こんなこと…」楓は静かに呟き、涙を流すことすらできなかった。翔の死が、あまりにも無情に彼女の前に立ちふさがっていた。
その後、父親は何も言わずに立ち去り、楓を置いてその場を去った。翔の死が意味するものは、まだ楓には分からなかった。だが、彼女の心の中で何かが燃え上がり、翔の仇を取る決意が固まっていった。
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