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閉店後のピザ屋。
店の灯りはオーブンの光だけ。
静かな夜。
カウンターに並んで座る二人。
エリオットはいつものように笑っていた。
ネクタイを指に巻きながら。
ぐい
チャンスが少し前に引かれる。
「……」
エリオットはにこにこしている。
「チャンス」
「ん」
「逃げないんでしょ」
チャンスは軽く笑う。
「逃げない」
エリオットはネクタイをくるくる回す。
「ほんと?」
「ほんと」
「マフィアいるのに?」
チャンスは肩をすくめる。
「慣れた」
エリオットはまた笑う。
「ギャンブラーだもんね」
「そう」
少し沈黙。
外を車が通る音。
エリオットはネクタイを軽く引く。
ぐい
チャンスの顔が近くなる。
エリオットはまだ笑っている。
でも。
ふと。
笑顔が消えた。
「……チャンス」
「ん?」
エリオットの目が真っ直ぐになる。
さっきまでの軽い雰囲気が消えていた。
「怖くないの?」
チャンスが少し眉を上げる。
「何が」
エリオットはネクタイを掴んだまま言う。
「撃たれるの」
静かな声。
「追われるの」
少し間。
「死ぬの」
店の空気が少し重くなる。
チャンスは数秒黙る。
それから言う。
「怖い」
エリオットが少し驚く。
チャンスは続ける。
「でも」
肩をすくめる。
「慣れた」
エリオットはじっと見る。
そして小さく言う。
「慣れないでよ」
チャンスが少し笑う。
「難しいな」
エリオットはネクタイを強く握る。
ぐい
チャンスがかなり近くなる。
エリオットの目は真剣だった。
「チャンス」
「ん」
「死んだら」
少し間。
「ネクタイ引っ張れなくなる」
チャンスが吹き出す。
「それ理由か」
エリオットは少しだけ笑う。
でも目はまだ真剣。
「あと」
「?」
「ピザ食べに来なくなる」
チャンスは数秒黙る。
それから言う。
「来る」
エリオットが眉を上げる。
「死んでも?」
チャンスは笑う。
「幽霊で」
エリオットはやっと笑った。
「やだ」
そしてまた。
ネクタイ。
ぐい
「生きて来て」
チャンスは少し黙る。
それから静かに言う。
「……努力する」
エリオットは満足そうに笑う。
またいつもの顔に戻る。
「よし」
チャンスが言う。
「それ」
「ん?」
「お前が引っ張る限り」
ネクタイを軽く揺らす。
「来るかもな」
エリオットはにこっと笑う。
そして。
もう一回。
ぐい
「じゃあ離さない」
夜のピザ屋。
静かな店の中で。
ネクタイだけが揺れていた。