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ゆゆゆゆ
#doublefedora
3,275
#Paycheck
閉店後のピザ屋。
店の灯りはオーブンの光だけ。
静かな夜。
カウンターに並んで座る二人。
エリオットはいつものように笑っていた。
ネクタイを指に巻きながら。
ぐい
チャンスが少し前に引かれる。
「……」
エリオットはにこにこしている。
「チャンス」
「ん」
「逃げないんでしょ」
チャンスは軽く笑う。
「逃げない」
エリオットはネクタイをくるくる回す。
「ほんと?」
「ほんと」
「マフィアいるのに?」
チャンスは肩をすくめる。
「慣れた」
エリオットはまた笑う。
「ギャンブラーだもんね」
「そう」
少し沈黙。
外を車が通る音。
エリオットはネクタイを軽く引く。
ぐい
チャンスの顔が近くなる。
エリオットはまだ笑っている。
でも。
ふと。
笑顔が消えた。
「……チャンス」
「ん?」
エリオットの目が真っ直ぐになる。
さっきまでの軽い雰囲気が消えていた。
「怖くないの?」
チャンスが少し眉を上げる。
「何が」
エリオットはネクタイを掴んだまま言う。
「撃たれるの」
静かな声。
「追われるの」
少し間。
「死ぬの」
店の空気が少し重くなる。
チャンスは数秒黙る。
それから言う。
「怖い」
エリオットが少し驚く。
チャンスは続ける。
「でも」
肩をすくめる。
「慣れた」
エリオットはじっと見る。
そして小さく言う。
「慣れないでよ」
チャンスが少し笑う。
「難しいな」
エリオットはネクタイを強く握る。
ぐい
チャンスがかなり近くなる。
エリオットの目は真剣だった。
「チャンス」
「ん」
「死んだら」
少し間。
「ネクタイ引っ張れなくなる」
チャンスが吹き出す。
「それ理由か」
エリオットは少しだけ笑う。
でも目はまだ真剣。
「あと」
「?」
「ピザ食べに来なくなる」
チャンスは数秒黙る。
それから言う。
「来る」
エリオットが眉を上げる。
「死んでも?」
チャンスは笑う。
「幽霊で」
エリオットはやっと笑った。
「やだ」
そしてまた。
ネクタイ。
ぐい
「生きて来て」
チャンスは少し黙る。
それから静かに言う。
「……努力する」
エリオットは満足そうに笑う。
またいつもの顔に戻る。
「よし」
チャンスが言う。
「それ」
「ん?」
「お前が引っ張る限り」
ネクタイを軽く揺らす。
「来るかもな」
エリオットはにこっと笑う。
そして。
もう一回。
ぐい
「じゃあ離さない」
夜のピザ屋。
静かな店の中で。
ネクタイだけが揺れていた。