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出水視点
昼休み中のことだった。
窓際の席でジュースを飲んでいた時、後ろの席の米屋が話しかけてきた。
「なあ、ナマエちゃん、過呼吸で保健室に運ばれたらしいぜ」
その言葉が耳に入った瞬間、ぼんやりしていた頭が一気に冴えた。
ナマエがそんな状態になるなんて、今まで聞いたことがなかった。
(なんで……?)
放課後、俺は自然とナマエの元へ向かっていた。
廊下の角を曲がると、いつも通りの明るい声が聞こえてきた。
『あ!出水先輩! なんでここに?』
制服姿のナマエが、にっこりと笑ってこっちを見ている。
でもその目は、どこか焦点が定まらないような、不自然な輝きをしていた。
「大丈夫だったのか? 話聞いたんだけど」
『え? うん、全然平気! たまにそういうのあるだけ。気にしないでよ』
そう言ってナマエは軽く笑った。けれど、その笑顔はどこか作り物っぽくて。
「……ほんとか?」
『……うん。よくあることだから』
俺は言葉に詰まってしまった。
その時のナマエは、まるで自分を無理やり笑わせているみたいだった。
「……ナマエ、無理すんなよ」
『なんでもない! ほら、もう帰らなきゃ』
そう言うと、ナマエは一歩だけ足早に歩き出した。
(そうやって、バレバレじゃん)
俺はナマエの後ろ姿を見送るしかなかった。
本当は何かあることはわかってる。
だけど、本人が隠そうとしてるなら、どうしたらいいかわからない。
ただ、ナマエの“陽気”と“明るさ”の奥に、確かにある闇の存在を、俺は感じてしまった。