テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第52話 〚笑顔の練習〛(りあ視点)
翌朝。
教室の扉を開けた瞬間、りあは一瞬だけ足を止めた。
(……静か?)
でも、それは勘違いだった。
「りあ、おはよ」
「ちょっといい?」
声をかけてきたのは、同じクラスの女子たちだった。
以前なら、警戒してしまっていた相手。
「な、なに……?」
小声で聞くと、女子の一人が周りを気にして言った。
「前にさ、りあが“ぶりっ子”してた時に惚れてた男子、いたでしょ」
りあの胸が一瞬ひやっとする。
「……あの時のやり方、教えてほしいんだけど」
「静かにでいいから」
責めるような声じゃなかった。
むしろ、少し照れた感じ。
(……え?)
「私たち、あの人のこと好きでさ」
「でも普通に話すと緊張して無理で」
りあは一瞬迷ってから、息を吸った。
「……いいよ」
昼休み。
りあは女子クラスメイトたちと一緒に、例の男子のところへ向かった。
「おはよ〜」
声のトーンを少し上げて、距離感を意識する。
「え、あ……お、おはよう」
男子は一瞬で顔を赤くした。
りあは横目で女子たちを見て、
さりげなく仕草や話し方を“実演”する。
「今日の授業、眠くなかった?」
「私ちょっと眠くて〜」
その横で、女子たちも同じように話しかける。
結果は——
「……え、なんか雰囲気変わった?」
「可愛い……」
男子の反応は、分かりやすかった。
女子たちは顔を見合わせて、
小さくガッツポーズ。
少し離れた場所で、それを見ていた澪たち。
「……ふふ」
えまが吹き出す。
「りあ、上手すぎでしょ」
しおりが肩を揺らす。
「なんか、楽しそう」
みさとが笑う。
澪も、安心したように目を細めた。
その様子を見ていた他のクラスメイトたちが、
ひそひそと話し始める。
「りあって、あんな面白かったっけ」
「前と全然違うよね」
放課後。
「ありがとう!」
女子クラスメイトたちがりあに頭を下げた。
「おかげでちゃんと話せた」
「自信ついたかも」
りあは少し照れながら、首を振る。
「こちらこそ。役に立ててよかった」
胸の奥が、あたたかい。
利用でも、計算でもない。
一緒に笑って、助け合っただけ。
(……私、ちゃんとここにいる)
そう思えたことが、
りあにとって何よりの変化だった。