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2件
最高です、、、!
ショッピングを終え、6人は購入した服を身につけ、化粧も完璧に仕上げた。
鏡の前でお互いの姿を見比べ、にこりと笑い合う。
「よし、完璧だな!」
ひまなつが元気よく言うと、らんは軽く頷きながらも口元に微笑みを浮かべる。
「みんなで相席屋に行こうぜ!今なら男の気持ちなんて手に取るように分かるしな」
それを聞いて、すちとみこと、いるまは少し顔を曇らせる。
「え、相席屋……?」
「話すだけだし、食事も無料だし……まあ、いいか」
結局、話すだけでご飯も無料というメリットに負け、3人も渋々ながら行くことを決める。
6人で相席屋に行くことになり、「女の子っぽく振る舞おう!」と話がまとまる。
最初に練習を始めたのは、らんとひまなつ。
らんは普段から落ち着いた雰囲気だけど、少し声を柔らかくして語尾に「〜だよ」とか「〜かな?」をつけるだけでぐっと女子っぽくなる。
「えー、こう? ……あ、なんかいけそう」
「やっぱりリーダーは吸収はやいわ〜」と、周りも納得。
ひまなつはもともと気だるげで柔らかい話し方だから、ちょっとトーンを上げて「〜だよねぇ」と伸ばすだけで一瞬で女子感が出る。
「ほら、あたしもう女子でしょ」
「……すご、違和感ない」
本人もノリノリで、練習そっちのけでみんなをからかって遊び出す。
一方、みことはぎこちなく真似しようとしてみるものの――
「えっと……わ、わたし……?」
声の高さも語尾の伸ばし方も不自然で、聞いているみんなは吹き出してしまう。
すちが笑いながら首を振る。
「いや、みこちゃんはそのままでいいよ。無理に変える必要ない。今のままが一番かわいいし」
「えっ……お、俺のまま……?」
らんやこさめも「確かに」「天然感あるし、逆にウケいいと思う」と賛同して、結局みことは練習免除に。
照れながらも「なんかずるい……」と口を尖らせるみこと。
けれど、みんなから「素で勝てるの羨ましい」と言われ、ますます顔を赤くしてしまうのだった。
相席屋の作戦会議は、どこか文化祭前みたいなワクワク感に包まれていた。
「とにかく、みこちゃんは無防備すぎるからさ。 悪い虫が寄ってきても、俺が絶対守るからね」
すちの満面の笑顔――なのに、その裏に隠された闘志が透けて見えて、らんは思わず肩をすくめる。
「……いや、その笑顔が一番怖いんだけど」
「えっ、そう? 普通に笑ってるだけなのに」
「いやいや、オーラ出てるから」
そんな会話を聞いていたひまなつは、気だるげにあくびをしながらもにやりと笑った。
「でもまあ、みことはその無防備さでも、すちっていう番犬が横にいりゃ何とかなるっしょ」
「番犬……!?」みことが目を丸くする。
すちは逆に「うん、上等だよ」と自信満々で返す。
すると、こさめが楽しそうに笑いながら、いるまと顔を見合わせて言った。
「だいじょーぶ! いるまくんも無防備だけど、俺ら3人で囲うから任せて!」
「囲うって……動物園の檻かよ」
らんが苦笑しつつも、なんだかんだでその輪に加わっている。
みことは照れ笑いしながらも、少し安心したようにみんなを見渡した。
「……じゃあ、俺、がんばらなくてもいいんだね」
「そうそう、そのままでいて」
「うん、みことは素で最強」
和気あいあいとした空気のまま、本番へ向けて準備が進んでいった――。
___
いよいよ相席屋の夜。
6人は緊張半分、楽しみ半分で席に着いた。
すちは、入店してからずっとみことの手を握ったまま離さない。
「ほら、大丈夫。俺がいるから」
にこっと優しく微笑むすちに、みことは小さく「う、うん……」と頷き、頬を赤く染める。
やがて向かいに座った男性たちが話しかけてくる。
「こんばんは、みんな学生さん?」
「かわいいね、名前聞いてもいい?」
その瞬間、みことは固まってしまった。
視線を落とし、指をぎゅっと握りしめ、声を出そうとしても出ない。
「え、あ……あの……」
顔は真っ赤、完全にパニック状態。
困り果てているみことを抱き寄せるように、すちがすっと腕を回す。
そして笑顔を浮かべたまま、しかし目の奥だけが鋭く光っていた。
「ごめんなさい、この子、人見知りなんです。だからちょっと緊張しちゃって」
柔らかい声なのに、どこか圧を含んだ空気に、相手は「あ、そうなんだ……」と引き下がるしかない。
みことはすちの胸にうずくまるようにして、小さく息を整える。
「……ありがとう、すち」
「気にしないで。俺が守るって言ったでしょ?」
すちはまた、みことの手をぎゅっと握り直した。
その仕草はまるで、「この子は俺のものだから」と宣言しているみたいで、らんとひまなつは目を合わせて「やっぱり番犬だな……」と苦笑するのだった。
すちがみことを守っている横で、らんとひまなつは完全に「爆モテ女子」へと変貌していた。
らんは普段の落ち着いた雰囲気を残しつつも、柔らかい声色で相手の話を上手に拾い、自然と会話を広げていく。
「へぇ〜!そうなんだ、すごいね」
笑顔でうなずきながら返すだけで、相手の男性たちはどんどん調子に乗り、らんの周りに話題が集まっていく。
ひまなつは逆にふわっとした調子で、気だるげなのに相槌がやたらと可愛い。
「ふふっ、まじで〜? おもしろいじゃん」
「えー、そういうの好きかも〜」
ほんのり色っぽい雰囲気を漂わせるせいで、相手の視線は自然と彼に集中していた。
「……あれ、なんか、二人すげぇな」
と、圧倒されるのは向かいの男たちだけでなく、同じテーブルのいるまもだった。
さらに、こさめは持ち前の明るさで場を盛り上げる。
「ちょっとちょっと!そっちばっか話してずるい〜!こさとも話して!」
軽妙なツッコミや笑顔で一気に雰囲気を明るくしてしまう。
その横でいるまは、普段は話し慣れしているくせに、こういう場にはめっぽう弱い。
「お、おう……」
周りの盛り上がりについていけず、圧倒されてただ頷くばかり。
らん・ひまなつ・こさめがキラキラと「爆モテ女子」っぷりを発揮する一方で、
すちとみことは相変わらず二人の世界。
そしているまだけが「場慣れしてねぇ……」と居心地悪そうにしていた。
らんとひまなつが爆モテ女子っぷりを発揮し、こさめが場を盛り上げているそのとき。
少し離れた席で静かにしていたいるまに、数人の男たちがじりじりと寄ってきた。
「ねえ、君さ」
「見た目はめっちゃ強そうなのに……実は控えめなんでしょ?」
「そのギャップ、やばいって。めっちゃかわいい」
突然の言葉にいるまは目を見開いた。
(……はぁ!?かわいいって俺に言うか普通!?)
心の中で叫びながらも、すぐに状況を把握する。
下手に反抗すれば厄介になる。なら――演技でかわしてやるしかない。
「え、あ……そ、そんな……」
少し頬に手を添え、視線を逸らす。
声をわざと小さく震わせて、恥ずかしげに笑う。
「や、やめて……そういうこと言われると……」
いつもの兄貴肌からは想像もつかない仕草に、男たちは一気に色めき立った。
「うわっ、やば!かわいい反応!」
「照れてる顔最高〜!」
完全にまんまと騙され、いるまの周りにさらに人が集まる。
(……くっそ、こんな芝居に引っかかるなんて、単純すぎんだろ!)
心の中で毒づきながらも、表情は必死に「健気で恥ずかしがりな女子」を演じ続けるいるま。
しかし、その瞬間だった。
「だめっ!」
「この子に近づかないで!」
「守るのはうちらだから!」
ひまなつ、らん、そしてこさめが一斉に飛びついた。
いるまの両腕にらんとひまなつが、そして背中からこさめが抱きつく。
「なっ……お前らっ!」
一気に体をホールドされ、いるまは完全に包囲された格好になった。
「この子はあたしらのだから!」
「他の人にちょっかい出させない!」
「そうそう!うちらがぜーんぶ守るからね!」
3人が息ぴったりに声を揃える。
その様子はまるで本気の彼氏(彼女)ムーブで、相手の男たちは顔を引きつらせた。
「……え、ちょ、仲良すぎじゃない?」
「すご、壁厚いな……」
しぶしぶ退いていく男たち。
残されたいるまは――真っ赤な顔で、3人にぎゅうぎゅうに抱きつかれたまま。
「……おま、離れろって!暑いんだよ!!」
必死で振り払おうとするが、らんもひまなつもこさめも「やだ〜!」と笑いながら離れない。
「かわいい〜!いるまが照れてる!」
「めったに見れねぇな、これ」
「俺らのいるま〜♡」
「やめろっ!ばか!!!」
顔を覆って叫ぶいるま。
だが耳まで真っ赤に染まっているのを、3人に見抜かれてしまい、さらにからかわれるのだった。