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本来ならば今日は公休日だ。智には休日出勤だからと告げて家を出た。
10:00
日勤は営業に血眼になっている時間帯、会社の休憩室にドライバーの姿は皆無、居たとしても定年間近の周囲に無関心なジジィばかりだ。
西村はこの時間帯を狙って一旦会社に立ち寄り、黒いTシャツに黒いジーンズの私服に着替え、可愛らしいショップバッグをスチール製のロッカーから取り出した。
あの赤いワンピースの朱音は街中では目立つ。そこで予め彼女に似合いそうな服を購入して会社のロッカーに隠し持って居たのだ。朱音とは繁華街の裏通りに在る木の生い茂った神社の境内で待ち合わせ、時間差でビジネスホテルの部屋に入った。
白い壁、電球色のシーリングライト、床は落ち着いた深緑のカーペットで座り心地の良さそうなグレーのソファもある。薄手のベージュのカーテンの隙間から光の筋が伸び、軋むダブルベッドを照らしている。
「ほら、咥えろよ。いつもしてるんだろ?」
「・・・・うん」
ベッドの上で仰向けになった西村の上に覆い被さった朱音は亀頭をペロリと舐め、小さな口にそれを含んだ。そして左手を根本に添えると頭を上下させて浅く深く動かす。ぬちゅぬちゅと朱音の口の端から垂れる唾液の音が淫靡な雰囲気を盛り上げた。少女に《《ご奉仕》》させて居る征服感が堪らない西村は腰を上下させ、彼女の口腔の奥までそれを押し込んだ。
「ん、んぐ」
「マジ、朱音は最高だなぁ」
「・・・」
目の前で上下する肛門と淫部。このような痴態を満喫出来る幸せを噛み締めながら西村はジワリと湿り気を含んだその窪みで指を抜き差しした。
「すげぇな」
何度挿れても指に吸い付くこの感触が西村を急き立て、体勢を変えて両足を持ち上げると朱音のひだがそれを招き入れる。朱音はただ純粋に《《愛する人》》が快感に浸る姿に喜びを感じ、デリバリーヘルスで身に付けた技術を惜しみなく彼に注いだ。
バスルームから水音が聞こえる。激しい情事の後、シャワーを浴びた西村はベッドの上で缶ビールを手に一息付いていた。昼間からセックスに興じ、その後の冷たいビールの一口目は勤務後の一杯に勝る旨さだった。
「うんメェ。最高じゃん」
智は正常位以外の体位を嫌がり、互いが相手の性器を舐め合う等以ての外だった。嫁との性行為がマンネリ化していた西村は《《何にでも応えてくれる》》朱音の身体に魅了され、40万円の返済が終わってもこの時間を手放したく無いと思う様になっていた。
シャワーを終え、バスタオルでその桜色の髪の毛の水気を取りながらバスルームから出て来た朱音の華奢な肢体、手で覆うと隠れてしまう小さな胸に虜にされた西村はちょいちょいとシワの寄ったベッドの上に手招きした。
濡れた前髪に碧眼の瞳、もしかしたら初めて配車で病院に迎えに行った時からこうなる事が分かっていたような錯覚に陥る。
キシッと軽い音を立て隣に座った朱音の肩を強く抱く。
「朱音、これからもずっと一緒に居てくれるか?」
朱音にとってそれはプロポーズ以外の何でも無く、彼女はコクリと頷き西村の少しゴツゴツした左手を握った。
西村は日々ハンドルを握り、洗車やタイヤ交換など手を使う作業が多かった為に普段から結婚指輪は外していた。
朱音は彼が妻帯者である事を知らず、また疑う事も無かった。西村は西村で、これは《《契約》》なのだから毛頭それを伝える気も無く、2人の思いには徐々に|乖離《かいり》が生じ始めていた。
「朱音、これに着替えろ」
可愛らしいピンクにレースの模様が印刷されたショップバッグを手渡された朱音は目を輝かせた。
「これ、何?」
「どうぞ、お姫さまにプレゼント」
上半身はシンプルなボートネックで袖は鈴蘭の花を連想させるパフスリーブ、下半身のスカートはふんわりと広がる膝丈で、赤色の細かい小花が咲き乱れ裾にはピンタックとレースが施された白いワンピース。それは朱音が普段着ている色鮮やかな赤いワンピースが色褪せて見える程に美しく、まるで純白のウェディングドレスの様でもあった。
「・・・・可愛い」
西村としては彼女にどんな色が似合うか分からず、ショップ店員に髪が桜色で華奢だと伝えたところこのワンピースを勧められた、ただそれだけの理由だった。
「・・・・あ、ありがとう」
目尻に涙を浮かべて喜ぶ朱音の反応に西村は満更でもなかった。
「やめろよ、照れるだろ」
朱音は赤いワンピースを脱ぎ丁寧に畳むと可愛らしいショップバッグに入れ、白いワンピースに袖を通した。西村が丁寧な動きで背中のチャックをジジジジと上げる。サイズもピッタリだった。
「ほれ、行くぞ」
「どこに?」
「市役所行くんだろう、窓口までついて行ってやるよ」
朱音の家庭事情は特殊で母親は彼女が中学3年生の時に失踪した。父親は知っての通りのパチンコ好きで200万円の借金を作り娘を山代温泉のデリバリーヘルスに売り払い、現在朱音は自宅横の廃車寸前の車に寝泊まりしている。また、デリヘルで稼いだ日々の売上金は父親の懐に入り、到底まともな暮らしとは言えなかった。
そこで朱音は女性専用シェルター(DV配偶者などから逃れて生活する一時的な避難所)への避難を希望した。
それには先ず公的機関で相談しなければならない。万が一保護対象にならない場合でも1泊1,000〜1,500円程度で安全に暮らせる専用シェルターも有る。
「ちょっと離れて歩け。仲間に見られたら恥ずかしいからな」
「うん」
歓楽街の裏通り。昔からの古い家屋が立ち並ぶ入り組んだ細い道を西村が先頭に立ち、電信柱2本分離れた距離を保った朱音がその後を追い金沢市役所裏の出入り口に向かった。