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「俺の気持ちなんか、何も知らないくせに」
翔太への片想いを自覚して3ヶ月になった頃。
前からそうだと思っていたけど、翔太が阿部に『阿部ちゃん、阿部ちゃん』とやたら絡む事が増えた気がした。
あぁ、翔太は阿部が好きなんだ。何も証拠はないのにそう確信した。
俺はリーダーとしてみんなを大切にしよう、その日は少し悲しくて家で一人で落ち込んだけど翌日から切り替えた。
翔太には他のメンバーより個人的にメッセージを送る回数が多かったけど、それもやめた。
翔太が隣に来るとさり気なく阿部と場所を交代した。
翔太がたまに見せる、縋るような目が気になったけど、そのうち阿部と話し込んで過ごすようになっていった。
これで良かったんだと、そう思っていたのに。
「照、ちょっと来い」
翔太に呼び出された。伺いもなく、急に『来い』ときたので暇ではなかったけどついて行く。
人気のない通路は大きな窓があり、夕陽が差し込んでいた。
「なぁ、俺照になんかした?」
「え?」
「ハッキリ言うけどお前、俺のこと避けてるだろ」
なるほど、いきなり身を引きすぎたのかも知れないとここに来て思う。
「そんなつもりないけど」
否定すると翔太がぐっと唇を噛んだ。泣きたいのを我慢している時だと、急に罪悪感が襲って来る。
「嘘だ」
「嘘じゃない」
「嘘つけ!」
少し声を荒げた翔太はハッとして俺に背を向けた。
「翔太。俺はリーダーとしてみんな平等にしてるだけだよ」
「……」
不満げに背中で話を聞く翔太。本当なら今すぐ後ろから抱きしめてやりたくて思わず伸ばした手を引っ込める。
「お前にちょっと近すぎた時期があったから、みんなと同じにした。それだけ」
「なんで?」
「何でって…」
好きだったから、なんて言えなくて言葉に詰まっていると、翔太は『俺、けっこう嬉しかったのに』と呟いた。
「翔太」
「なんでもない」
そう続いた声は掠れていた。
「…だって」
お前、阿部が好きなんだろ。とこっちも尻すぼみになりながら言うと翔太からは『はぁ?』と素っ頓狂な声が返ってきた。
「俺が阿部ちゃんを?なんで」
「何でって…そうじゃないの」
「違うけど」
あっさり否定した翔太の、大げさな溜息。
「お前は、俺の事何も知らないんだな」
「翔太の事って…」
「もういい。俺の気持ちなんか、何も知らないくせに。勝手な親切心で離れていったんだ」
振り返って睨む翔太は、目の周りと鼻の頭を赤くして夕陽に白い肌を煌めかせた。
それがあまりに儚くて、綺麗で、触れたら壊れてしまいそうで、ただ見惚れる。
「お前は、みんなに遠慮しすぎだ。そんな事してたら…」
「…してたら?」
続きを躊躇うように口を結び、翔太は背を向けて去っていった。
コメント
11件
えー😍😍😍 どういうことですか!? そういうこですか??💛💙🙌
珍しいね、こういうの書くの。 楽しみ😊