バレンタインデーの告白
バレンタインデーの昼休み、教室はどこか浮かれた空気に包まれていた。男女が手作りのチョコレートを渡し合い、少し照れくさい笑顔を浮かべながら楽しそうにしている。黒井正義(マサ)はそんな様子を見ながら、ふと隣の席の多々光を見た。
光はいつも通りの冷静な表情で、何も気にしていない様子で机に向かっていた。だけど、何故か今日は、その姿が気になって仕方なかった。
「あの、光?」
黒井は光に声をかける。光は顔を上げ、いつも通りの無表情で「何?」と返す。
「…なんか、今日の光、なんか違うなって思ってさ。」黒井は少し戸惑いながら言った。「今日はバレンタインでしょ?誰かにチョコ渡されたの?」
光はその質問に少し目を見開くが、すぐに無表情に戻り、「ああ、まあ…もらったけど」と答える。
その言葉に黒井の胸がざわつく。「もらった?」思わずその反応を見せたが、光はあくまで冷静だ。
「誰に?」黒井の声が少し強くなる。
「別に、大したことない。もう、渡したり渡されたりって、俺にはまだそういうのは必要ない。」光は無関心なフリをして、また机に目を向ける。
その言葉に、黒井は心の中で何かが引っかかるのを感じる。何か、胸の奥で重たいものがグッと押し寄せてきた。
その時、教室の入り口から一人の女の子が現れる。手にチョコレートを持っていて、堂々と光に近づいてきた。
「光くん、私、光君のことがずっと好きだったの。今日はバレンタインだから、これを渡したくて…」その女子は顔を真っ赤にして言った。
光はその女の目を見て、ほんの少しだけ驚いた顔をするが、すぐに無表情でチョコレートを受け取った。
黒井はその光景を見て、心の中で何かが爆発しそうな感覚を覚える。彼が他の誰かから告白されるなんて、考えたこともなかった。
「ちょっと待って!」黒井は急に立ち上がり、声を荒げて言った。「光…俺のこと、どう思ってる?」
光はびっくりした顔で黒井を見た。「お前、何を急に…」
「俺、光のこと、好きだ。ずっと好きだった。」黒井の声は震えていた。顔は赤く、心臓が鼓動を早くしている。
教室の空気が一瞬凍りついた。女の子が驚いた表情で立ち尽くし、光は困惑したように黒井を見つめる。
黒井は自分でも分からないほど感情が溢れてきて、続けざまに言った。「ひかるが他の人にに告白されてるのを見るなんて、耐えられなくて。」
その言葉に、光の表情が少しだけ変わる。「お前、そんなことで…」と、少し困ったように言うが、その目には何か温かいものが宿っている。
「違うんだ、光。俺、ひかるにずっと言えなかったけど、もう我慢できないんだ」黒井の顔は真剣そのものだった。
光はしばらく黙っていたが、ふと口を開く。「お前、バカだな。俺はただ、気を使うのが嫌なだけだ。でも、お前の気持ちには応えられるかもしれない。」
その言葉を聞いた瞬間、黒井はホッとしたように微笑んだ。そして、光の手をぎゅっと握った。「ありがとう、光。ずっと一緒だよ。」
光はその手を少し力強く握り返し、ただ静かに微笑んだ。
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神小説…フォロー失礼します…!🫶