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ストーカーに刺されてしまった
「うわぁ、な〜にコレ・・・」
「気持ちの悪い・・・」
「燃やしちゃいましょうよ・・・」
「これは主様の目には入れたくないね・・・」
「不愉快だ」
別邸の執事達は主あてに届いていた荷物から異臭がするということで先に中を改めていた。
沢山の小包の中には、主が無くしたと言っていた私物に白いナニカがべっとりと着いた状態のものの数々が入っていた。
それに、主宛の手紙も毎日のように届いている。
そのどれもが今日のドレスは素敵だったとか、お風呂の時間がいつも楽しみだとか、気持ちの悪い文面ばかりが並んでいて不快だった。
『ストーカーってこと?』
「ええ、そのようです」
「気をつけるに越したことは無いからな」
「絶対にお守りするので、主様は心配しないでくださいね!」
「俺達執事が絶対に側に着いておくことにするから」
「お前はもう少し危機感を持て。何かあってからでは遅い」
別邸の執事たちからストーカー被害の報告が上がり、主は眉を寄せた。
正直、心当たりがあったからだ。
〜この間のパーティーでのこと〜
「悪魔執事の主様ですよねっ!?私と会ったこと覚えていますか!?」
鼻息荒くとある青年が話しかけてきたのだ。
彼曰く、前依頼で出かけた先で天使に襲われて悪魔執事に助けてもらった。そこで怪我をしていた青年に簡単な手当をしたのが主で、その時主に一目惚れしたという。
『あ〜・・・そんなこともあったような・・・』
「あの時助けて頂いたお礼が出来ていないので、是非家にお越しくださいませんか!?」
『あ〜・・・そういうのは、うちの交渉係を通じて招待していただけませんか?』
「そ、そうですよね!で、では悪魔執事の主様!今度お手紙をお送りさせていただきますね!」
『あ、はい・・・どうも・・・』
多分あの青年だろう。
主はそのことを執事達に伝えた。
「畏まりました。では、そのような不審者を見つけ次第拘束いたします」
『よろしくね』
その後の数週間は何事もなく平和に過ごせていた。
執事達はいつも以上に主にベッタリとくっついていること以外、いつも通りの穏やかな日常であった。
しかし、主とベレンがお菓子屋を覗いていた時、後ろから「主様っ!!!」とユーハンの切羽詰まった声が響いた。
主が死の危険を感じ取り、横にいたベレンを突き飛ばした。
「「「主様っっ!!!!」」」
近くにいた執事達の叫び声が重なると同時に、主の背中にナイフが突き立てられた。
『かはっ!?』
主がその場に倒れ込むと、フードを被った青年がナイフを引き抜いて何度も主を刺していく。
「愛していたのに!!あんなに愛していると伝えたのに!!どうして!?どうして応えてくれない!?どうして何も言ってくれないんだ!?
どうして悪魔執事たちに俺の邪魔をするように指示をした!?どうして姿を見せてくれなくなった!?どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして・・・」
青年は執事達に取り押さえられてもずっと主に対しての歪んだ愛を叫び続けた。
そして、主が死んだことを確認すると拘束を振りほどき、自分の喉をナイフで切り裂き主の側に倒れ込んだ。
最後に主の顔を見ようと伸ばした手はハナマルとシロに踏みつけられ、ユーハンとテディが主の遺体をすぐに上着で包んで持ち去った。
突き飛ばされて主が殺されるところを間近で見てしまったベレンはシロに引っ張り上げられて立ち上がり、ふらふらと馬車に戻った。
主は大量の血を流していたため、馬車の中で傷が塞がっても意識が戻ることはなかった。
主を治療室に送り届け、別邸で反省会をしていると、ベレンが泣き出してしまった。
「主様・・・どうして俺を突き飛ばしたの?」
そう言って泣くベレンをどう慰めて良いか、皆狼狽えて何も言えずに居ると、回復した主が後ろから抱きついてこう言った。
『君たちのことが大好きだからだよ。君たちには生きていてほしいから』