【第七話 連絡】
連絡手段を手に入れた俊介は、ニマニマと奇妙な笑みを浮かべながら、スマホと睨めっこしている。リアル陰キャではあるが、ネット陽キャでもある。ネットの俊介は無敵なのだ。
『朝美さん!明日空いてますか?』
『はい。カフェ集合で。』
何度も、何度も会うことが出来る。フィーバータイムだ。会っては話し…そんな日々が続いた。何週間も続いた。そして、冬のこと。朝美から、連絡が来なくなってしまった。既読がつかない。何週間もつかなかった。
『朝美さん、どうかされましたか?』
『朝美さん』
『どこにいるんですか?』
このような文が20件以上。このまま見ると、ただのメンヘラにしか見えない。そう、俊介は気づいた。既読が付くのを待つことを、ついに諦め、書いたメッセージを消した。
雪が降っていた。
ある肌寒い雪の日、カフェへ行った。優をカフェに呼び、作戦会議だ。
「今回はどうしたんだよ」
「朝美さんに嫌われたかもぉぉぉ…たすけて優せんぱぁぁぁぁい…うわあああああ…」
シンプルに泣いている。ここ3週間も、メッセージが来ていないのだ。
「まぁ、そんな時もあるだろ?な?俺の今の彼女もさ、既読全然つかなかった理由、めっちゃショボかったし。『LINE開くの忘れてた☆』みたいな。多分それっしょ?な?」
「んなわけないだろぉぉぉぉぉ…」
「……厄介だな。」
優に泣きつく俊介。そして、カフェで作業している学生にクスッと笑われている。店員さんは抱腹絶倒している。目線に気づいた優は「黙れ黙れ!!」と言いながら俊介の腰を撫でる。
「朝美さん、僕のこと嫌いになったんだ!絶対そうだ!!ああ朝美さぁん!もうダメだぁ!!」
「うるせぇよ!!」
コーヒーをすする優。超高音で泣く俊介。抱腹絶倒が止まらない店員。貰い笑いする学生。カフェ内とは思えない、カオスな状況だ。
「今回は、放っておくのが一番だ!必ず朝美はいるし、優しいんだからな!実は朝美もおっちょこちょいなんだしさ!昔からそうだし!!」
「そ、そうなのぉ?」
鼻水を垂らしながら、優の顔を見つめる俊介。…飼い主を探す子犬のようだ。
「絶対に朝美とは仲良くなれるし、ゲット出来るって!!俺を信じろ!俊介。」
「……わかった」
「フフフッ↑」
店員がついに声を出して笑い出した。優はため息をつけながら、レジへ行く。
「帰るぞ。そろそろ店長に出禁令が出されそうだからな。」
「…ありがとう、優。」
俊介は優と別れる。LINE画面を見つめた。やはり、返信はない。『朝美さん』とだけ打っておいた。そして
既読がついた。
優はタバコを取り出し、火をつける。ゆっくりと吸い、白い煙を口から出す。
「はぁ」
深呼吸をした後、誰もいない路地裏、呟く。
「俊介ごめんな。朝美と俺、付き合った。」
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