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凛は化物からもらった服をまじまじと見つめると、いよいよ本格的になってきたからなのか少しだけ心の底から【生きたい】と思えるようになっていた。多分これが人間らしさなのだろうか…
そんなことを頭の中で考えていると化物がこっちを見てにんまりと笑っている表情が目に止まった。
「何?」凛は化け物に聞いた。「君がその服を着たことで、美味しそうに思えてきた…」
化物はそんな言葉をぼやいた。凛は〔ようやくその言葉が聞けた〕心の中でそう思った。
しかしなぜだろう今はその言葉がとても恐ろしくてたまらない…
化物は凛が小刻みに震えていることを悟り「まさか今さら食べないでとか言わないよな…」
と睨んできた。しかし、凛は勇気を振り絞って化物に心の内を打ち明けることにした。
「ねえ…今までよくしてもらって悪いんだけどさ私生きたいって思えたのだから…その…私のことやっぱり食べないでもらえる」凛は言いたい事を言い切った後、化物の顔を見た。
意外にも化物の顔は穏やかだった。しかし目線は冷たい「そう言えば前の子もそんな心変わりをしていたな…だけどもうお前は逃げられない…明日にでもお前を食ってやろうそうだなまずは
皮を剥いでから血を抜いて一晩吊し上げるそうすれば美味しい【北京ダック】の完成さ」
化物は優しそうな顔でさらりと怖いことを言った。その間凛は化物の口にした【前の子】のあの残酷な姿が脳裏をよぎった。多分前の子とは凛が最初に化物を見た時に食われていたあの子のことだろう
凛はこの時心の底から「あんなふうにはなりたくない」と強く思ったのだった。