翌日―。
遂に銀次郎がこの家に来る。
2人が偶然の再会を2回もした事にも何か絶対に意味があるはず…。
こじつけかもしれないが、桜子はどうしても銀次郎の事が諦めきれないでいた。
銀次郎の気持ちが知りたい…。
金融屋、金貸しという肩書きで分厚く覆ったものの中にある、本当の気持ちを。
今日という日にそれを確かめる…。
夜19時―
「もうそろそろ来るかな。ふぅ…。」
パチパチっ!
桜子は自分の頬を叩き気合いを入れた…
“ピーンポーン”
その途端、タイミングを見計らったかのようにインターホンが鳴った。
桜子は急いでボイスチェンジャーを持ち、インターホンに出る。
「はい。」
「今日約束してた、萬田金融のもんですが。」
「あー!萬田さんお待ちしておりました。どうぞお入りください。そのまま部屋にあがってもらって構いませんので!」
そう言って、桜子はマンションのオートロックを解除した。
…………。
今この部屋に萬田くんが向かってきている。
そう考えるとそれまで冷静だった気持ちがどんどんと熱くドクドクと高鳴るのが自分でも分かった。
「落ち着け…落ち着け…。」
そう小声で呟きながら銀次郎を待つ。
“…ガチャッ”
玄関の扉が開く音がした。
そして、ザザッ…
靴を脱ぎ
銀次郎がこちらへ近づいてくる影がリビングの扉の磨り硝子越しに大きくなってくる…。
“カチャッ…”
「失礼します、萬田金融の……。」
扉をあけ挨拶をしようとした萬田くんは、途中で言葉を詰まらせ固まった。
当然の事だと思う。
お客がいるはずの家に、全く関係ないはずの同級生が居るのだから。
「萬田くん。わざわざ来てくれてありがとうね。」
「は?…何でお前がおるんや…?金貸してほしい言うてたお客はどこや?」
「お金貸してほしいお客なんて本当は居てへんねん…。ごめん。」
桜子は持っていたボイスチェンジャーを口元に当ててそう話した。
その姿を見た銀次郎はその一瞬で全てを悟った様子で口を開いた
「はぁ、なるほどな…。」
「ほんまにごめんね?でも私が素直に誘ったところで萬田くん絶対に相手にしてくれへんかったやろ?」
「それでわざわざ演技までしてワシを騙したんか。それで?何が目的や。」
「目的…知りたい?」
「……。米原、お前変な事考えてるんやったらやめとけよ。」
桜子の空気感が変わったのをすぐに察知する銀次郎は少し身構える。
「変な事?それって…。」
サッ…
そう言って銀次郎に勢いよく近づいた桜子はおもむろに銀次郎の腕を掴んだ。
ガタっ!
勢いよく距離を詰めてきた桜子に少し動揺した銀次郎は後ろにあったダイニングテーブルに足をぶつけバランスを崩した。
ギギギッ。
次の瞬間、一瞬の隙をついて何かが銀次郎の腕に繋がれた。
「……!?米原、なにしてんねん!」
銀次郎の右手首に繋がれた銀色に光るもの。
ギギギッ…
その銀色の輪っかの一方を今度は自分の手首につけた桜子。
「これが私の目的。」
「お前…ほんまに狂っとるな!わしにこないな事してただで済むと思うなよ!」
2人の手首に繋がれた銀色に光るものは手錠。桜子が鍵を解かなければ絶対に外れない。
「もう狂ってるって思われてもいい。ただで済むなんて思ってないよ?別に好きなだけお金請求してくれてもいい。」
そう言いながら桜子は銀次郎に体を近づけた。
ぐぐ…。
「や、やめんかい!なんでわしなんや。他にもええ男はぎょーさんおるやろが…」
「またそんな事言うんや…。三年前も同じようなこと私に言ったよな。お前やったらええ男に出会えるって…。私色んな男の人見てきたけど、萬田くん以上にええ男に出会ったことない。」
「あほか…それはお前の見る目が無いんや。」
「そうやったとしても別にいい。私は萬田くんじゃないとあかんねん…。」
そう言って自分の体をさらに銀次郎に密着させ体重をかける桜子。
銀次郎はその重みで後ろにあったダイニングテーブルに思わず寄りかかった。
ギギっ…
ダイニングテーブルの軋む音が部屋に響く。
「どない言われてもわしの答えは三年前と変わらんぞ…。そやから早くこれ外せ。」
「そっか…。これでもあかん?」
チュッ…
桜子は体を密着させながら銀次郎の唇におもむろにキスをした。
「…!?」
ヌチュッ…「んんん!」
桜子はそのまま自分の舌を銀次郎の唇に這わせ舌を絡める…
「んふ……。」
「んん…!!」
ピチャッ…
舌と舌が絡み合う音、漏れ出る吐息と声がお互いの耳に響く…。絡み合った舌の温度がかすかに上がりお互いの鼓動が高鳴っていくのが分かった。
………。
「ん…!やめろ…っ!」
銀次郎はそれを振りほどくように顔を横にそらした。
その顔は恥じらいからか、ほのかに赤みを帯びている。
「萬田くん、顔赤くなってる。」
「そ、そんなわけないやろ…!」
「そんなわけあるよ?鏡で見てみる?」
「よ、余計なことすな!」
「でも…私片方の手にしか手錠してないよ?ほんまに嫌やったら片手でも…私の事押し返せると思うけどなぁ?」
「な…そ、それは…。」
普段、あんなにも冷静沈着で何事にも動じない銀次郎が動揺し恥じらいを感じている…
強く抵抗しないということは意外と萬田くんもまんざらでもないのか?
その姿を自分だけのものにしたい…
欲望が増す桜子。
「萬田くんが悪いんやで…。」
「は?ん…!」
チュッ…
再び銀次郎にキスを落とし、 今度はそこから首筋にキスを落としていく
チュッ
「ぅ……//」
キスを落とすたびにぴくっと反応する萬田くんの体。
その反応が凄く色っぽい。
嫌がっている割には私に成されるがままの萬田くんの体。
「嫌がってる割にはえらいおとなしいね…。」
桜子は銀次郎を見つめながら意地悪にそう問い詰める。
「それは…!わしがどうあがいてもお前は手錠外さんのやろ?そやから…仕方なく…」
「へぇー?だから仕方なくいう事聞いてくれてるん?体ピクピク反応してたけどなぁ…気持ちよくなかった?」
「……//そんなわけないやろ!」
そう顔を赤らめながら否定する銀次郎。
「ふーん。でもここはそうじゃないって言ってるみたいやけど…。」
ぐいっ…
銀次郎の言葉とは裏腹に体を密着させている桜子の太腿に感じる、硬くてあたたかいものの存在…。
桜子は銀次郎のそれに太腿を擦り付けるように押し当てた。
「うっ!……やめ…///」
今度は分かりやすくビクリと反応した銀次郎の体。
「やっぱり気持ちいいんや?」
桜子はその反応がもっと見たくて、さらに硬く熱くなっている銀次郎のそこに強く太腿をそこに擦り付けた。
「うぅ…、違う…!//」
「萬田くんほんまに頑固やね…。」
ヌチュッ…
桜子は再び銀次郎に唇を重ね舌を絡めながら、硬く熱くなったそこを指先でなぞるようになで上げた。
ビクビクッ!
「ぁ……っ」
ガシッ!
次の瞬間、銀次郎はそこに触れている桜子の手を勢いよく掴み、自分の体を引き離した。
「米原、わしを弄ぶのもええ加減せえよ!」
銀次郎の怒鳴り声が部屋に響き渡る
さっきまでとは打って変わった銀次郎の態度に驚き固まった桜子。
銀次郎は少し息を切らしながら桜子の顔を鋭い目つきで睨んでいた。
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