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そのまま引きずられるようにして店の外へ連れ出されてしまい、近くの喫茶店へと押し込まれた。
窓際のテーブルに向かい合って座り、お互いにコーヒーを頼むと、女性が先に口を開いた。
「あなたは、私が誰なのかわかりませんよね?」
その質問の意味がよくわからなかったので、「はい」と答えておくことにした。
女性は少し考える素振りを見せた後、こう言った。
「私は、あなたのご先祖様ですよ」
僕は言葉を失ってしまった。なぜなら、僕の記憶の中にある限り、僕の両親以外に家族と呼べる人は一人もいないからだ。
親戚とかならいるかもしれないけれど、少なくとも、祖父母はいないはずだ。
そもそも、この人の年齢はいったいいくつなのだろうか? 見た感じ二十代前半くらいに見えるけど、もしも僕の予想より年上だった場合、年齢の話はあまりしない方がよさそうだ。
「失礼ながら、年齢を聞いてもいいですか?」
恐る恐る尋ねてみると、女性はあっさりと答えた。
「今年で三十歳ですね」
思ったよりも若かったことに安堵しつつ、話を進めることにする。
「あの……どうして突然現れられたんですか?」
正直言って、この人が僕の祖母であるという可能性はかなり低いと思う。仮にこの人が本当だとしても、今まで一度も会ったことがないというのはおかしなことだ。
それに、わざわざ会いに来る理由もないはずなのだ。
「実は私には子供がいてね。今は結婚して幸せな家庭を築いているんだけど、その子があなたに会いたいって言うものだから、今日はその付き添いで来てあげたんだよ」
どうやら僕の疑問に対する答えはこれで終わりらしく、それからしばらくの間、黙ったまま時間だけが過ぎていった。
その間、特に何かを話すことはなかったが、不思議と居心地の悪さのようなものを感じることはなく、むしろ穏やかな気持ちになれた。
しばらく経って、今度は彼女が僕に尋ねた。
「ねぇ、あなた……ちょっと話があるんだけど?」
いきなり呼び捨てですか。まぁ別に構わないけどね。それにしても、どうしてこうなった。
「私からも聞きたいことがあるんですが、構いませんよね?」
どうやら相手の方が一枚上手らしい。
「先に質問したのはこっちなんだけど」
なんだこれ。なんで俺は初対面の女性と言い争っているんだろう。
「そろそろいいかしら? あなたの質問にはちゃんと答えてあげるから安心なさい」
そう言うと、女性は僕の前にある椅子を引き出して座った。
僕も向かい側に腰掛けようとしたが、そこでふと思った。今の状況は非常にマズイのではないかと。
というのも、僕は今まさに女性とお近づきになろうとしているところなのだ。その状況で、目の前に見知らぬ男性が現れるというのは非常に良くない事態なんじゃないかと思う。
「あのぉ……」
思い切って声をかけてみると、女性は顔を上げてくれたものの、何も言わずに黙って僕の顔を観察しているようだった。
これはアレだね、完全に不審者扱いされているパターンですね! このままじゃヤバいと思ってなんとか話を続けようとするけど、なかなか言葉が出て来ない。
こうなったら、とにかく話題を振るしかないよね!?
「えぇーっと……そうだっ!」
ダメだ、やっぱり全然続かない。そもそも女性の知り合いなんてほとんどいないしなぁ……。