夜の闇が再び広がり、カイトの心には限界が近づいていたことを感じていた。
参加者はどんどん減り、残されたのは自分、リョウ、マリナの三人のみ。
もし次に人狼が村人を襲撃すれば、ゲームは終わり、村人の敗北が確定する。
カイトの頭には、今までの出来事がぐるぐると渦巻いていた。
アイカの無実、タケルの無実、ミカの消失……。
そしてリョウを二度占った結果、彼が村人である可能性が高いと確信している。
しかし、マリナをどう解釈すべきかがわからなかった。
彼女が人狼なのか、それとも誤解された無実の村人なのか。
どちらにしても、今日が最後の夜であり、今夜が命運を決する夜になることは確実だった。
「次は……マリナを占おう」
カイトは決意を固めた。
もし彼の占いが正しいのなら、マリナが「人狼」と表示されたならば、彼女が村人だということだ。だが、もし「村人」と出たなら、それは彼女が人狼である証拠だ。
カイトの手は震えながらも、彼の運命を決める一手を打った。
カイトはマリナを占った。
そして結果は……「村人」。
カイトは全身が凍りつくような感覚に襲われた。
「裏占い師」の役職を考慮すれば、マリナは人狼だということになる。
だが、それが本当に正しいのか?
これまでの失敗が頭をよぎり、彼の心をさらなる不安に駆り立てた。
しかし、この占い結果を無視するわけにはいかない。
「マリナ……君が人狼だったんだな」
心の中でそう呟いたカイトは、次の日に備えるため、一睡もできぬまま朝を待った。
すべてが終わるのは、次の朝だ。
夜が明ける。
人狼に襲撃されなかった。
そのためカイト、リョウ、そしてマリナの三人が最後の朝を迎えた。
全員が疲れ果て、表情に明らかな緊張が浮かんでいた。
今日の議論が、ゲームの結末を決定づけるのだ。
「カイト、昨夜は誰を占った?」
リョウが静かに問いかける。
カイトは深呼吸をして答えた。
「マリナを占った。そして結果は『村人』だった。でも、僕の役職を考えれば、逆にマリナが人狼だということになるんだ。」
その言葉に、リョウは慎重に頷いた。
「そうか。じゃあ、今日の議論で決めなければならないのは、マリナが人狼かどうかってことだな。」
マリナは冷静にカイトの言葉を聞いていたが、やがて口を開いた。
「カイト、何度も言うけど、私は人狼じゃないわ。あなたが『裏占い師』だというのも本当かどうか分からないし、ここで私を疑うのは間違ってる。私はずっとこの村を守ろうとしてきたのよ。」
その言葉に、カイトの心はまた揺れた。
もし自分がまた間違っていたら、再び無実の村人を犠牲にすることになる。
そして、残った人狼が確実に勝利するだろう。
しかし、占い結果は揺るがない。
「裏占い師」としてのカイトの直感は、マリナが人狼だと示していた。
「リョウ、僕たちはここで決断を下さなければならない。もしマリナを疑うなら、彼女を処刑するべきだ。でも……もし間違っていたら、全員が滅びる。」
リョウは少しの間黙って考えた後、厳しい表情で頷いた。
「カイト、君を信じる。もし君の占い結果が正しいのなら、マリナが人狼だということになる。ここで手を打たなければ、僕たちの負けだ。」
それを聞いたマリナは、カイトに鋭い目を向けた。
「カイト、リョウ、本当に私が人狼だと思っているの?私を殺して、このゲームが終わると思う?まだわからないの?カイト、君こそが人狼なんじゃないかって!」
その言葉にカイトは一瞬動揺した。
マリナが人狼であることを疑いながらも、彼女の言葉には不安を掻き立てる何かがあった。
しかし、ここで迷っていては全員が滅びる。
最終的に、全員の票が集まった。
そしてスピーカーから冷たく響く声が会場に鳴り渡った。
「今日は……マリナを処刑する。」
マリナは静かに立ち上がり、諦めたような微笑みを浮かべた。
「……最後まで信じてもらえなかったのね。」
彼女の言葉が胸に響いたが、カイトは自分の選択を信じるしかなかった。
彼女が光に包まれて消えていくと、スピーカーの声が再び鳴り響いた。
「マリナは……人狼でした。」
その瞬間、カイトは全身の力が抜けるような感覚を覚えた。
彼の占いは正しかった。
マリナが人狼であり、彼らは勝利したのだ。
ゲームは終わり、村人たちは救われた。
リョウも深い息を吐き、カイトの肩に手を置いた。
「やったな、カイト。君の判断が僕たちを救った。」
カイトは疲れ切った表情で頷いた。
「ああ……でも、もう二度とこんなゲームには参加したくないよ。」
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