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#佐野勇斗
luv
1,397
放課後。
教室の前で、足が止まる。
中から聞こえる笑い声。
「佐野せんまじやばい〜!」
女子たちの声。
楽しそうな空気。
(……)
覗くつもりなんてなかった。
でも、見てしまった。
佐野先生が笑っている。
自然に。
全員距離近い、先生にボディタッチしてるやつもいる。
(……なんで)
胸がざわつく。
イライラする。
理由が分からない。
「……は、何やってんだ俺」
その場を離れようとする。
「山中」
名前を呼ばれる。
足が止まる。
(なんで今…)
「帰るのか?」
いつも通りの声。
「……はい」
短く答える。
女子たちの視線が刺さる。
(なんで俺だけ)
「ちょっと待てよ」
腕を掴まれる。
「……離してください」
「なんか機嫌悪くないか」
「別に」
その瞬間、
「またそれか」
低い声。
一気に空気が変わる。
そのまま廊下の奥へ引きずられる。
誰もいない場所。
壁に押し付けられる。
「……痛いんですけど」
「なんで避ける」
「避けてません」
「嘘つけ」
距離が近い。
逃げ場がない。
「他のやつにはそんな顔しねぇのに」
「……関係ないでしょ」
「ある」
「俺にはある」
息が詰まる。
「……なんで」
「お前が特別だから」
その言葉で、全部崩れる。
「……やめてください」
「何を」
「そういうの」
声が震える。
「……あの人たちに触られてるの」
気づけば口にしていた。
「嫌でした」
沈黙。
そして——
「……は」
低く笑う。
「やっぱりな」
顎を掴まれる。
「嫉妬してんじゃねぇか」
「違——」
言い終わる前に、
キスされる。
強引で、逃げ場がない。
「んっ……!」
頭が真っ白になる。
離れたあとも距離はゼロ。
「他のやつ見んな」
荒い呼吸。
「俺だけ見てろ」
その目は、完全に“教師”じゃない。
「……なんで」
震える声。
「なんでそんなことするんですか」
「分かんねぇの?」
額を押し付けられる。
「俺も同じだからだよ」
その一言で、
もう否定できなかった。
佐野side
やってしまった。
いや。
たぶん最初から、止まる気なんてなかった。
「……はぁ」
人気のない廊下。
壁に背を預けて、深く息を吐く。
さっきまでここに山中がいた。
唇に残る感触が、生々しく消えない。
(最低だな)
教師が、生徒にキス。
完全にアウトだ。
そんなこと、分かりきっている。
でも——
「嫌でした」
あいつがそう言った瞬間。
理性が吹き飛んだ。
『あの人たちに触られてるの、嫌でした』
あの言葉が頭から離れない。
嫉妬。
山中が。
俺に。
その事実だけで、どうしようもなく嬉しかった。
同時に、抑えていたものが全部壊れた。
最初は、“放っておけない”だけだった。
危うくて、消えそうで。
だから目を離せなかった。
でも今は違う。
山中が笑うと安心する。
隣にいると落ち着く。
他のやつに囲まれているとイラつく。
そして、あいつが俺以外を見るだけで、苦しくなる。
「……重症だろ」
誰もいない廊下で呟く。
もうとっくに、生徒相手に抱く感情じゃない。
思い出す。
キスしたあとのあいつの顔。
驚いて、息を乱して、
でも、拒絶はしなかった。
それが、余計にまずかった。
(あんな顔されたら……無理だろ)
額を押し付けたとき、逃げないどころか、小さく震えながらこっちを見返してきた。
あの目。
無防備で、縋るみたいで、どこか諦めきれていない目。
——欲しくなるに決まってる。
「……っ」
頭を掻く。
ダメだ。
考えるほど深みにハマる。
「あいたいた!佐野先生!」
突然声をかけられる。
振り返ると、女子生徒が立っていた。
「あ、次の授業のプリントって——」
「あー、悪い。後で職員室来て」
「? はーい」
不思議そうな顔で去っていく。
……ダメだ。
今、人とまともに話せる状態じゃない。
完全にあいつで頭が埋まっている。
職員室へ戻る途中、窓ガラスに映る自分と目が合う。
「……終わってんな」
笑えるくらい余裕がない。
今までの俺なら、もっと上手くやれていた。
一線を越えないように。
適度な距離を保って。
でも山中相手だと、それができない。
あいつは簡単に、俺の内側へ入り込んでくる。
『俺だけ見てろ』
思い返して、思わず顔を覆う。
(何言ってんだ俺……)
独占欲丸出しじゃねぇか。
しかも、生徒相手に。
でも。
後悔しているかと言われたら
「……してねぇんだよな」
それが一番厄介だった。
むしろ逆。
キスした瞬間、心のどこかで安心していた。
(ああ、もう隠さなくていいんだ)
って。
ただ、その代償は重い。
教師と生徒。
知られたら終わる。
あいつだって傷つく。
そんなこと分かっている。
分かっているのに。
「……離せるわけねぇだろ」
小さく呟く。
あの日。
屋上で、山中の腕を掴んだ瞬間から。
もう手放せなくなっていた。
その夜。
ベッドに寝転がっても眠れない。
スマホを見る。
連絡先。
山中の名前。
犬の写真送るとか言って、無理やり追加した。
開いて、閉じる。
送る内容を打って、消す。
完全に不審者だ。
「……はぁ」
深く息を吐く。
会いたい。
今すぐ顔を見たい。
声が聞きたい。
——重い。
自分でも引くくらいに。
でも、もしここで距離を取ったら。
またあいつは、“空っぽ”な顔に戻ってしまう気がした。
それだけは嫌だった。
静かな部屋で、ぽつりと呟く。
「……もう遅いか」
認めた瞬間だった。
これは保護欲なんかじゃない。
同情でもない。
ちゃんと、どうしようもないくらい、恋だった。
Continue
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更新遅れてすみません💦今週は土曜日に更新する予定です🩷🤍
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