テラーノベル
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あれから、何を話したのかもよく覚えていないまま、 ただ時間だけがゆっくり過ぎていって
気がついたら夜中になっていた。
あんなに降っていた雨も止んでいて、
今この空間には、時計の秒針の音だけが静かに鳴り響いている。
先に口を開いたのは、樹音さんだった。
「今日、泊まってけば?」
その一言で、喉の奥がきゅっと詰まった。
息の仕方を、一瞬忘れる。
続けて――
「〇〇の事情、よく分かんないけど……
ほっときたくないのは事実だから。」
まっすぐ目を見て、そう伝えてくる樹音さんに、 思わず視線を奪われてしまう。
断る理由を探そうとしたけれど、
思いつく前に、もう頷いていた。
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「雨に濡れて寒いでしょ。お風呂、先入っていいよ。」
そう言って渡してくれたのは、
グレーのスウェットパンツと、見るからに大きそうな黒のパーカーだった。
「大きさ合わないかもだけど、
一応、俺が持ってる中でいちばん小さいのだから……。」
それを受け取ってから、顔を上げるまでに、少し時間がかかった。
『ありがとうございます……』
わざわざ考えて選んでくれたことが伝わってきて、 些細なことなのに、また頬が熱くなる。
それをごまかすみたいに、
私は逃げるように浴室へ向かった。
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ジュノンside
微かに聞こえるシャワーの音に、
自分の鼓動が早くなっているのが分かる。
女付き合いは、あまり得意なほうじゃない。
どちらかといえば、苦手なほうだ。
それなのに――。
〇〇のことを考えれば考えるほど、
頭の中が彼女で埋まっていく。
今日、初めて出会ったばかりなのに。
こんなにも、離したくないと思える存在がいることに気づいて。
それがまぐれだなんて、
そう簡単に片付けられなくて。
そう信じたくなるくらいには、
もう引き返せない気がしていた___。
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そんなことを考えながら待っていると、
リビングのドアが、小さな音を立てて開いた。
『お風呂……ありがとうございました。』
濡れたままの髪。
少し赤くなった頬。
サイズの合っていない服。
その全部が、やけに胸にくる。
衝動を押し込めるように、息を整えて――
「熱くなかった? 大丈夫?」
『大丈夫でした……。』
そう聞きながら、
自分の鼓動だけが、やけにうるさかった__。
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俺がお風呂から上がると、
ソファには、すっかり眠ってしまった〇〇の姿があった。
そっとブランケットをかけて、隣に座る。
規則正しい寝息が聞こえてきて、
気づけば、〇〇は俺の肩に頭を預けていた。
動かすのが惜しくて、
そのまま、じっと夜をやり過ごす。
夜は、まだ終わりそうになくて__
俺も静かに目を閉じる____。
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