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30 ◇この嘘つき野郎が
この一件以来、夫の正義の挙動がおかしい。
夫が満島まほりとスマホで遣り取りしたあとだとか……
休みの日に他の理由をつけて、彼女に会いに行ったあとだとかに……
何も私が怒ったりしていないのにも関わらず、クドクドと私に纏わりつき、
自分が誰それと会ってどんなことをしていたか……ということについて、
いちいち私に丁寧に説明してくるのだ。
そして私はというと、なるべくニッコリと微笑み、その夫の釈明のような
説明にちゃんと耳を傾ける。
『この嘘つき野郎が……』と、胸の奥で詰りながら。
心の中で『嘘ばかり、ついてるんじないわよ』とは思うものの
怒ってはいない。
表立ってはもとより、心の中でもそれは同じだ。
怒る値打ちある?
夫の様子を見るにつけ、モテる俺様でいたい――――。
そして一方では、妻にあなたがいないと……と、縋られる自分でいたい――――。
そのような夫の気持ちが透けて見える。
大体において、私は夫に対して冷静でいられた。
そして、夫からの酷い仕打ちに対して、独りで立ち直り、自分の幸せを
自分なりに構築している。
何故か、幸福感をMAXに感じる時ほど、不思議と夫に対して
意地悪な感情が沸き起こるのだった。
不幸だから、意地悪になるというのは分かるけれど、幸せの中にいても
意地悪な気持ちが沸き起こるなんて、当の本人も不思議である。
『満島まほりに結婚相手が現れて、夫の前から彼女がいなくなったら、
面白くない?』なーんて。
まっね、夫は彼女持ちを一度経験しているから、また新しく彼女を作るのかも
しれないが……。
結構、あ奴はめげない人間かもしれない。