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「何処までも青い」
私は暖かくて幸福な環境で生まれ育ったと思う。
七人兄弟の三番目として産まれた私はしっかりする時もあれば我慢もしたり兄や姉に甘えたりもできる。そんなそこそこ良い立ち位置だったし
家も臨海部の商家でそれなりに裕福な方だったから衣食住に困ったことも無い。
毎日潮の香りと柔らかな日差しに包まれた故郷。
家族の思い出話をすれば他の従者の皆から変な顔をされるのもなれっこだし。
だからだろうか、私の性根が面倒なくらいにまっすぐで頑丈で、なのに存外脆いのは
アーネット様と私の出会いはただの偶然に過ぎなかった。 子供の頃、迷子になって街中を泣きながら歩いていた私に声をかけてくれた女の子がいた。
私よりも濃い藍色に近い綺麗な髪とラズベリーみたいな赤い瞳の特徴的で猫みたいな可愛い人。
「お姫様ってこんな人のことを言うのかな」 それがアーネット様へ私が最初に思ったことだった。
昔から私はアーネット様のことを眺めるのが好きだったのをよく覚えてる。
笑った顔、拗ねた顔、真剣な顔、優しい顔、カンナ様や魔女の方たちと一緒にいる時の様子、探偵の仕事をしている時の様子。その全部が私の大好きなアーネット様だった。
私は何か隠し事をするのも苦手だから毎回それを伝えていたしアーネット様の反応を見るのが好きだった、その度に私はもっと褒めていたしアーネット様は驚いたあと照れて沢山言葉を紡いだあと呆れたように笑ってくれていた。私はそんなアーネット様のことが好きだったしアーネット様も私のことが好きだったと思う。
いつの日か幼い私はアーネット様の探偵事務所に入り浸るようになっていき、15になった頃には従者もどきをやっていた。
私はその事が本当に誇らしかった。
「アーネット様の為に頑張る」それが私のやり甲斐でもあり幸せでもあった、
そんなことを数年やっているとあることに気が付いた。そう、私はそんなに立派な人じゃないってことを。
メルマさんみたいに強くて冷静な訳でも
エネリスみたいに器用な訳でも
バレナさんみたいに大人っぽく振る舞えたりも
イーライのように自分からなにか解決策を見つける訳でもない。
その他の3人の事も羨ましかったし、私は最初から周りより劣りがちだってこともそんなことはわかりきっていた。でも私は努力と持ち前のバカ正直さで補えると信じてた。
でも現実は私が思っていたよりもずっとずっと苦しかった。
私は弱い。
そんな呪いたくなる真実が私のことを永遠に縛り付けてくる。
そのことをアーネット様は気が付いていたのでしょうか。
いいや、寧ろ気が付かない人なんていなかったでしょ、私は嘘をつけないから。
でも何よりも辛かったのは弱さじゃない、アーネット様を守れなかったことだ。
私はアーネット様が常に自己犠牲の元に生きていたこと、魔法により苦しみと傷を負っていたことも知っていた。でも私は守る盾にも対抗出来る剣にもなれなかった。
だから代わりに涙を流さずにずっと笑顔でいて、全ての人を好きになって、アーネット様のそばに居ることを決めた、
私が辛い表情なんてしたらアーネット様がもっと辛くなるってことだけはバカな私でもわかってたから。
でも、ごめんなさいアーネット様。
私は約束を破ってしまいます
やっぱり私は嘘はつけません。
他の人に嘘をつけない私は自分のこの気持ちにも嘘をつけません、アナタに会いたい。
もう一度抱きしめさせて欲しいし沢山話して沢山一緒にパンケーキでもなんでも作りたい、またカンナ様とイーライも呼んでお茶会をしたい。
なんでこの世優しい人に対しては優しくないの?
解決策はほかにないの?
見つけられる人がいないの?
どんなにすごい探偵でも見つけられない様な迷宮入りするような事件なの?
記憶に残る処刑台に上るアナタの最期は
バケツをひっくり返したと思うくらいの大雨が降っていたとは信じられないほど恨めしくなるような快晴の日でした。
世界中が貴方の死を祝福しているかのようで、同時にそれはあの日やって来た女勇者の瞳を連想させてくるほど清々しいほど青かった。
好きな色なのにどうも見たくて、そのまま一度空に目をやって深呼吸をした。
涙が出てくるくらい眩しい日差し。そして処刑台に目を戻すと太陽の光のせいで目が痛くなった。
ペンキをひっくり返したくらい鮮やかな青が目を焼くけど目は背けなかった。
だって背けたらそれはアーネット様への忠誠心に嘘をついてるも同然だから。
私の初めての嘘はもっとくだらないもので良い
アーネット様への嘘なんて死んでもつきたくない。
これは私の素直な気持ちだってアナタならわかるはずです。
「世界一可愛いアーネット様。どうかアナタの笑顔が、海の水のように永遠に枯れませんように。そして、私が青色を嫌いになりませんように」
願うのはアナタがもう少し我儘であれる世界であってほしかった。ただ、それだけです。
コメント
5件
あのほんとに、救いようが無さすぎる。なん、おかしくない????ねぇ、アーネットもびっくりだって
うわあああ…読み終わったあとしばらく動けなかったよ…😭💦 「好きな色なのにどうも見たくて」ってとこ、心臓ぎゅーってなった…!! 主人公のまっすぐで頑丈なのに脆いって性根の描写から、ずっとアーネット様のことだけ見て生きてきたのが伝わってきて、最後の願いで涙腺崩壊したよ…。青空の下の処刑シーンの対比が美しすぎて辛すぎる…!! さくらびさんの紡ぐ言葉のひとつひとつが刺さりすぎて、しばらくこの余韻に浸ってたい…次話、楽しみにしてます🌸
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